台湾でビジネスをする際、多くの商取引契約が成立するかどうかは、書面、印章、署名の有無だけでなく、当事者が重要事項に合意しているか、署名者に代表権があるかによって決まります。口頭の約束、メール、会社印や代表者印、電子署名にも法的効果が生じることがあり、別途、董事会や株主総会の決議が必要な場合もあります。本テーマでは、NDA、MOU、署名権限、準拠法から、中国語版・英語版、定型約款、検収、瑕疵、解除・終了までを扱い、見積り・交渉・履行に入る前に、「誰が何を約束できるのか」「問題が起きたときどう離脱するのか」を明確にします。 本コーナーは、旭時報 SUNRISE(寧旭メディア)が Startup Island TAIWAN のために企画・制作しています。 監修|法務:中銀法律事務所 財務・税務:urCFO 本コーナーの内容は、2026 年 8 月時点の台湾の法令に基づいています。その後の法改正は反映されていません。個別の案件については、専門家による個別の判断が必要です。
Startup Island TAIWANは、採用チャネル、人材育成プログラム、エコシステムパートナーとスタートアップをつなぎます。大学ネットワーク、スタートアップ求人プラットフォーム、コミュニティイベント、台湾での人材獲得・定着を支援する政府支援プログラムなどのリソースがあります。
MOU(基本合意書)の効力は、条項ごとに判断されます。秘密保持、独占交渉、費用分担、違約金、管轄裁判所および準拠法、紛争解決に関する6類型の条項は、十分に具体的に定められていれば、通常、法的拘束力を有します。いずれかの当事者が条項上の義務を履行しなかった場合、相手方は当該条項に基づいて責任を追及できます。一方、協力の目的、将来の取引条件、想定スケジュールに関する3類型の条項は、通常、法的拘束力を有しません。 文書の名称だけで法的効力が決まるわけではありません。「意向書」という名称であっても、内容が具体的かつ明確で、そのまま履行できるものであれば、裁判所によって正式な契約と認定されることがあります。 外国企業がMOUの締結を最終合意と捉え、早い段階から人員や資金を投入すると、二つのリスクが生じます。先行投入した費用を回収できないことと、その後の交渉で交渉力を失うことです。
なぜそれが重要なのか台湾の裁判所は、この種の文書について、その名称だけでなく、個々の内容に即して判断します。MOUという名称であることだけを理由に、正式な契約ではないと判断するわけではありません。裁判所は、双方が契約の最も重要な内容を明確かつ完全に定めているか、その内容が、当該文書だけで双方が直ちに履行を開始でき、改めて正式な契約を締結する必要がないほど具体的なものとなっているか、また、双方に当該契約に拘束される意思があるかどうかを検討します。これらの点を満たす場合、当該文書はすでに正式な契約にあたる可能性があります。 そのため、MOUに何をどこまで記載するかを慎重に見極める必要があります。協業条件がまだ固まっていない段階で過度な約束を盛り込むと、人員や費用を早期に投入する結果となります。最終的に合意に至らなかった場合、すでに投入した人員、時間、関連費用について、相手方から補償を受けることはほぼできません。また、こうした先行投入は、相手方に交渉材料を与え、本契約の交渉において、自社に不利な利益配分や過度に厳しい違約条項を求められる可能性があります。前期の投入を無駄にしないため、その企業は妥協せざるを得ない場合が少なくありません。
何をするかMOUの締結にあたって留意すべき内容は、以下の類型に分かれます。すでに締結済みの場合は、以下のリストを用いて確認し、リスクを評価してください。 1. 通常は拘束力を有する6類型の条項について、条項ごとに、その定めがあるか、ある場合は十分に具体的かを確認します。①秘密保持条項が、秘密保持の範囲、期間、違反した場合の効果を明確に定めているか。②独占交渉条項が、一定の期間内は売主が第三者と交渉してはならないことを明確に記載しているか。③費用分担条項に、たとえば「協業が成立しなかった場合、契約締結前に生じた関連費用を双方で折半する」といった定めがあるか。④違約金条項が、特定の義務について、具体的な懲罰的違約金、すなわち損害の填補に加えて別途支払う金額を定めているか。⑤管轄裁判所および準拠法条項が、将来紛争が生じた場合にどの国または地域の法律を適用し、どの裁判所が管轄するかを定めているか。この条項は訴訟の手続面で効力を生じます。⑥紛争解決条項が、紛争が生じた場合に双方が協議、調停、仲裁または訴訟のいずれによって解決するかを定めているか。 2. 通常は拘束力を有しない3類型の条項は、投入を継続する根拠としないでください。協力の目的および意向、将来の取引条件(価格、数量、納期)、想定スケジュールです。 3. 正式な契約を締結する前に、さらに人員や費用を投入する予定がある場合は、次の2つの条項を確認してください。「契約締結前の投入費用に関する補償条項」と「各段階またはマイルストーンに応じた解除・終了条項」であり、この期間の商業上のリスクを分担するためのものです。双方の履行義務をMOUの段階から明確に定めたい場合、条項は具体的、明確で、そのまま履行できるものでなければなりません。 ケース: A社は、ある工事の入札に参加するため、B社に製品およびサービスについて打診しました。B社は見積書と業務提携覚書を併せて送付し、A社の担当マネージャーが覚書に署名しました。これを受け、B社は、覚書への署名によって契約が成立したと主張しました。 台湾の裁判所は、覚書に記載された具体的な文言をもとに判断しました。覚書には、A社がB社の提供する製品およびサービスを採用することを約束した旨と、B社から提供された資料を他社に開示してはならない旨が記載されていました。そのため、裁判所は、当該覚書を協力の意向と秘密保持義務を定めた意向書と認定しました。一方、代金については双方の合意が成立していませんでした。見積書の備考欄には、署名のうえ返送された時点で正式な注文とみなす旨が記載されていましたが、A社は見積書に署名していませんでした。裁判所はこれらを踏まえ、双方の間に履行すべき義務は存在しないと判断しました。
すでに成立している可能性があります。 台湾では、双方が主要な条件について合意した時点で契約が成立します。会社印(公司大小章)の押印を待つ必要はありません。 裁判所は二つの点を確認します。第一に、一方当事者から、内容が具体的かつ確定しており、法的拘束を受ける意思を伴う申込みがなされたかどうかです。すなわち、条件が明確に提示され、その条件に拘束される意思が示されているかを確認します。第二に、相手方がその申込みを無条件かつ留保なく承諾したかどうかです。メールに数量、価格、納期が明記され、相手方が「OK」と返信した場合、裁判所が契約の成立を認定する可能性は高いと考えられます。 「押印していなければ法的責任は生じない」という理解は、台湾の実務では誤りであることが少なくありません。当該メールが正当な権限を有する代表者から送信されたことを示す証拠があり、かつ双方が主要な条件について合意に達している場合、裁判所は通常、契約がすでに成立したと認定します。
なぜそれが重要なのか台湾の裁判所が契約の成否を判断する際に見るのは、書面や押印の有無ではなく、双方の意思が合致しているかどうかです。押印は契約成立の必要要件ではありません。相手方が返信をしないまま、翌日に商品を受領して代金を支払った場合であっても、裁判所はその行為を承諾の意思表示と扱い、民法第153条により契約は同様に成立します。 交渉がどこまで進んでいるかによって、その文書がどのように位置づけられるかが決まります。主要な条件がすべて合意されている場合、表題が意向書であっても、あるいは一通のメールに記載されているだけの場合でも、裁判所がこれを正式な契約である本契約と認定することがあります。一部の条件のみ合意され、目的物および代金などの重要事項がなお協議中である場合は、将来、本契約を締結することを約束する「予約」にとどまると認定されることがあります。この段階では、いずれの当事者も相手方に対し、本契約上の義務の履行を直接求めることはできません。主要な条件がまったく合意されていない場合に初めて、法的拘束力を有しないことになります。
何をするか以下のリストに沿って、メールのやり取りの内容を項目ごとに確認してください。 1. まず契約が成立しているかを判断します。①一方当事者から、内容が具体的かつ確定しており、法的拘束を受ける意思を伴う申込みがなされているか。たとえば「A商品を100個、1個当たり100台湾ドルで販売します。納品日は◯月◯日です」といった内容です。②相手方がその申込みを無条件かつ留保なく承諾しているか。たとえば「承知しました。その内容で進めます」といった返信です。「売っていただけますか」という問いに「検討します」と返答した程度であれば、それは申込みの誘引にすぎず、契約はまだ成立していません。もっとも、数量、価格、納期が明記され、相手方が「OK」と返信している場合、裁判所が契約の成立を認定する可能性は高いと考えられます。 2. 次に、行為によって契約が黙示的に成立していないかを確認します。メールで「明日、貴社に100個を1個当たり100台湾ドルで納品します」と送信し、相手方が返信をしなかった場合であっても、翌日に商品を受領して代金を支払っていれば、これは行為による黙示の承諾にあたり、民法第153条により契約は同様に成立します。 3. まだ拘束されたくない場合は、やり取りの文書に次の四つの留保文言を入れてください。英語圏の契約実務では、この種の文言を「subject to contract」(正式な契約書の締結を条件とする旨の留保)と呼びます。①停止条件を設定してください。すなわち、一定の条件が満たされて初めて契約が成立するという定めです。メールまたは予備的な合意書に「本件は、双方が書面による契約に正式に署名し、会社印を押印するまで、契約は成立しない」と明記します。②最終承認権を留保してください。提案または返信において、本社または特定の責任者の最終承認を要する旨を表明します。この場合、当該メールは正式な申込みではなく、申込みの誘引として扱われます。③留保条項を加えてください。注文への自動応答メールまたは個別の返信メールに「注文の受領は処理手続に入ったことを示すにとどまり、注文の承諾を意味するものではない」と記載します。④あらかじめ拘束を受けない旨を表明してください。民法第154条により、申込者は、申込みの際にあらかじめ自らが拘束を受けない旨を表明し、調整の余地を残すことができます。 ケース: A社の最高経営責任者であるX氏は、会社を代表して売買意向書に署名しました。会社印を持参していなかったため、記したのは個人名のみでした。X氏は署名後もその場に残って待機しました。売主もその日のうちに意向書へ署名し、記載された条件での売却に同意するとともに、手付金の受領を確認しました。双方は5日以内に正式な契約を締結することを取り決めました。A社は後になって翻意し、会社印がない以上、契約は成立していないと主張しました。 裁判所は、X氏がA社の隠名代理人として行動していたと認定しました。すなわち、X氏は会社名を明示していなかったものの、実際にはA社を代理して署名しており、相手方もその事実を知っていた、または知り得る状況にあったと判断されました。双方はその場で目的物および代金について合意に達しており、民法第153条により売買契約はすでに成立しているのであって、押印は必要要件ではないとしました。判決は、当事者が目的物およびその代金について相互に同意したときに、売買契約は成立すると述べています。
どちらの方式も台湾では有効です。違いは契約が成立するかどうかではなく、紛争が生じた場合に、どちらの当事者が立証責任を負うかにあります。 国によっては、契約への署名と、その成立や真正の証明が一体として扱われます。署名によって契約が成立し、その署名が後に証拠としても用いられます。台湾では、契約の成立とその証明は別の問題です。契約は、双方が主要な条件について合意した時点で成立し、署名や押印を待つ必要はありません。署名、押印および電子署名は、主として紛争時の証明において役割を果たします。 したがって、実務上の問いは、単に「電子署名は台湾で有効か」ではなく、「その署名方法によって、どの程度立証しやすくなるか」です。2024年の法改正後、裁判所が文書の真正を直接推定できる方式は二つあります。経済部に登記された会社印と、認証機関が発行する証明書を用いた電子署名、すなわちデジタル署名です。その他の電子署名も同様に有効ですが、一方当事者が文書の真正を争った場合は、その真正を主張する側が立証責任を負います。
なぜそれが重要なのか2024年より前は、この推定を得られる方式は一つしかありませんでした。登記印鑑のみが、訴訟において直接「真正なものと推定」されたのです。当時、電子署名を用いた場合、契約自体は有効でも、紛争時には文書を提出する側が「相手方が電子署名の使用に同意したこと」と「本人が署名したこと」の両方を立証しなければなりませんでした。 2024年の台湾の電子署名法(原語「電子簽章法」)の改正により、変化は二つあります。 第一に、デジタル署名にも一定程度の立証効力が認められました。これは本人確認の仕組みを付加した電子署名です。認証機関が署名者の身元を確認して電子証明書を発行し、署名の際に、本人による署名であることを認証します。第6条により、証明書は二つの条件を満たす必要があります。政府の所管官庁の許可を受けた認証機関が発行したものであること、かつ有効期間内にあり、定められた用途の範囲内で使用されていることです。このようにして署名された文書は、裁判所が本人自らの署名によるものと推定し、否認する側が立証責任を負います。第二に、電子署名を利用する際に、相手方の事前同意を得る必要がなくなりました。第5条では、事前同意に代わって事前通知の仕組みが採用されています。利用を希望する側が相手方に通知し、合理的な期間を設けて異議を述べる機会を与えます。相手方が異議を述べなければ、電子署名を利用できます。 外国企業は、台湾の印鑑について正反対の二つの誤解を抱きがちです。一つは、会社印を押していなければ契約は成立しないという誤解です。もう一つは、会社印さえ押せば契約は必ず有効になるという思い込みです。どちらも正しくありません。押印は、文書の真正を証明する方法の一つにすぎません。
何をするか1. 金額が大きい契約や長期契約については、締結前に次の確認を追加することをお勧めします。相手方に会社設立登記表または変更登記表の写しを提出してもらい、契約書に押された印鑑が登記されている印鑑の組み合わせと一致するかを照合してください。相手方の印鑑は、将来紛争が生じた際に証拠となり得ます。事前に照合しておくことが、自社の保護につながります。 2. オンラインで契約を締結する場合は、電子署名の証明書の有効性を必ず確認してください。多くのクラウド署名プラットフォームは一般的な電子署名に該当します。有効ですが、紛争時には立証責任が貴社の側にあります。推定の効力を得るには、適格な電子証明書を伴うデジタル署名を用いる必要があります。たとえば政府機関が発行する工商証明書(企業向け電子証明書、原語「工商憑證」)や自然人証明書(個人向け、原語「自然人憑證」)で、手続はやや煩雑です。海外の電子署名プラットフォームの証明書が台湾でどのように承認されるかは、個別に確認してください。 3. 商取引に関する契約の多くは、電子的な方法で締結できます。法律上、例外とされる文書も一部あり、司法手続における一部の文書などがこれに該当します。相手方が紙の契約書への押印を求める場合は、それが法令上の要件なのか、単なる商慣習なのかを確認してください。法律の定めであれば従う必要がありますが、商慣習であれば交渉の余地があります。合意した内容は、契約書や見積書に明記してください。たとえば「双方は、電子署名またはメールによる返信をもって、契約の締結または承諾の確認とすることができる」と記載します。 4. 相手方から返送された契約書に「統一発票専用章」(税務用インボイス専用の印章)だけが押されている場合は、注意が必要です。この印章は原則としてインボイスの発行など税務用途に限られ、会社が対外的に契約を締結するための正式な印鑑ではありません。もっとも、問題は契約が当然に無効になるという点ではないのです。発票章のみが押された契約についても、契約の成立を認めた裁判例があります(下記のケース参照)。問題となるのは、正当な授権または代理権があったか、契約の効力が会社に及ぶかをめぐって争いが生じる余地があり、最終的な判断が裁判所に委ねられる可能性があることです。統一発票章のみが押された契約を受け入れることはお勧めしません。より望ましいのは、契約本文には会社印を押し、付属書類については簡便のため統一発票章によることができると取り決めておく方法です。 ケース: ある会社が、見積書を通じて業務委託案件について交渉していました。顧客は見積書に「統一発票専用章」を押して返送しましたが、後になって、この印章は文書の受領を示すにすぎず、双方は合意に達していないと主張しました。その結果、紛争となり、追加費用が生じました。本件で裁判所は最終的に、契約はすでに成立していたと認定しました。理由は、見積書の備考欄に、自署、電子署名またはメールの返信による確認はいずれも有効な承諾となる旨がすでに記載されていたこと、加えてその印章が真正なもので、押印した側が後に相手方へ履行を実際に求めていたことです。裁判所はさらに、商取引においては、「印章を押し間違えた」という事情だけを理由に、訴訟になった段階で契約の不成立を主張することはできないと指摘しました。
一概には言えません。台湾で商取引に関する契約が会社に対して効力を有するためには、署名または押印する者が、その会社を代表する権限を有している必要があります。 台湾では、法律上、董事長が対外的に会社を代表する者とされています。副総経理が会社を代表して契約を締結するには、会社から権限を付与されている必要があります。 台湾の商慣行では、欧米ではあまり見られない手段として、政府に登記された会社印が用いられます。台湾で「公司大小章」と呼ばれる会社の大小印です。これらの印鑑が契約書に押されていれば、その契約は会社が締結したものと推定され、有効性を主張する側の立証負担が軽減されます。ただし、印鑑の使用と代表権の有無は別の問題です。契約が有効かどうかを判断するうえで中心となるのは、署名または押印した者が会社から正当な権限を付与されていたかどうかです。
なぜそれが重要なのか台湾の裁判実務は、社内事情を知らない外国企業を比較的保護する傾向にあります。会社内部の意思決定手続は外部から容易に確認できないため、取引相手が事情を知らなければ、董事長が会社を代表して行った取引は通常有効であると判断されます。会社が董事長や経営幹部の権限について社内で設けている制限、たとえば一定額を超える場合に取締役会の承認を要するといった定めは、原則として、事情を知らない外部の取引相手には対抗できません。 ただし、会社が常に契約を受け入れなければならないわけではありません。特に注意すべき状況は次の三つです。第一は、署名者が当初から代表権を有していない場合です。権限のない者が会社印を無断で使用して契約を締結した場合、会社は契約による拘束を否定できます。 第二は、法律が正式な社内決議を求めている取引です。必要な手続を欠いた場合、契約が台湾企業に対して効力を生じないことがあります(どの取引がこれに当たるかは、下記の1をご覧ください)。 第三は、署名者が董事長であっても、その行為が会社の事業範囲にまったく含まれない場合です。董事長本人が契約書に署名し、または会社印を押した場合であっても、法律が求める株主総会決議を欠いていたときは、会社はなお拘束を免れることができると最高法院は判断しています(下記のケース参照)。
何をするか署名者が十分な代表権を有しているかどうかに不安がある場合は、次の手順で確認してください。 1. 契約が重大または例外的な取引に当たる場合は、まず相手方に、必要な社内決議を経ているかを確認してください。台湾企業が重大な取引をする前には、取締役会または株主総会の決議が必要となり、それを経て初めて、署名者が会社を代表して契約を締結できます。金額が大きい場合、通常の事業範囲に含まれない取引である場合、または会社の根本を揺るがすおそれがある場合が目安となります。たとえば他人の債務の保証、主要な事業や重要な財産の譲渡、合弁事業の設立、中核となる特許や商標の譲渡です。契約がこれに当たる場合は、署名する代表者にその決議の提示を求めてください。 2. 次に、署名者が相手方企業を代表する権限を有しているかを確認します。署名者が副総経理や総経理などの経営幹部である場合は、代表権または代理権を示す資料の提出を求めてください。定款、取締役会決議、委任状などがこれに当たります。名刺、役職名、本人が「董事長から全権を任されています」と述べることは、いずれも根拠になりません。この種の紛争において裁判官が問うのは、その台湾企業の側に、その人物に署名権限があると信じるに足りる外観があったかという点です。たとえば董事長が契約締結の場に同席していた、といった事情です。相手方の会社がそうした行為を一度もしていなければ、貴社の信頼に客観的な根拠がなく、裁判所はその会社にこの人物の署名について責任を負わせません。 3. 相手方が経済部に登記されている一組の会社印を押していれば、「この契約は会社が締結したものである」という推定を受けることができ、紛争時の立証負担が軽減されます。ただし、この推定の対象は、その印鑑が当該会社のものであるかどうかに限られます。署名または押印した者が権限を有していたかどうかまで推定されるものではありません。金額の大きい取引では、両方をそろえておくことをお勧めします。登記印が押された契約書に加えて、上記1の決議、または2の権限を示す資料です。 ケース: A社の董事長は、会社を代表してB社との間で工場および設備の売買契約を締結しました。この取引は、生産拠点を設備ごと一括して売却するものであり、法律が事前の株主総会決議を求める重要な財産の譲渡に当たりました。しかし、A社はその決議を経ていませんでした。契約の締結後、A社は翻意し、董事長にはこの取引について会社を代表する権限がなく、契約は拘束力を有しないと主張しました。B社は、自らは事情をまったく知らず、落ち度もなかったのだから保護されるべきだと反論しました。 最高法院は最終的にA社の主張を認めました。B社が援用しようとした保護法理は、別の場面を対象とするものです。すなわち、会社が権限のない者を権限があるように見せ、外部の取引相手がその外観を信頼した場合に、会社が責任を負うという場面です。しかし董事長はそうした人物ではありません。董事長はもともと、対外的に会社を代表して署名できる立場にあります。言い換えれば、董事長の代表権は法律によって直接付与されたものであり、会社が別途授権したものではありません。したがって、B社がその事情を知らなかったとしても、それを理由にA社へ本人としての責任を求めることはできません。
そのように取り決めること自体は可能です。ただし、この組み合わせでは、契約上の本来の争点を検討する前に、「どの国の法律を適用するか」という別の争点が生じます。 契約の解釈や適用を規律する法律を、準拠法といいます。台湾では、契約当事者が準拠法を自由に選択できます。台湾法、外国企業の自国法、中立的な第三国法のいずれも選べます。 台湾で事業を営む外国企業が自国法を準拠法として選択していても、紛争が台湾の裁判所で審理されることがあります。台湾の裁判官が外国法の内容を職権で調査することはありません。適用を主張する側が、その外国法の存在および内容を自らの費用で立証しなければなりません。立証できなければ、裁判所は最終的に、条理(一般的な法原則)または台湾法に基づいて判断することがあります。したがって契約の締結時には、二つのことを併せて決めておく必要があります。どの法律が契約を規律するか、そして、どこで紛争を解決するかです。
なぜそれが重要なのか契約に準拠法条項がない場合、適用される法律は、契約当事者ではなく裁判所が決定します。台湾の裁判所は、その契約と最も密接な関係を有する法律を特定します。一般に、契約の特徴を決定する主たる義務、すなわち「特徴的給付」(原語:特徵性履行)を負う当事者の所在地法が、これに当たると推定されます。たとえば販売店契約では、販売店が特定の地域(たとえば台湾)で販売し代金を支払う義務が特徴的給付とされることが多く、その所在地(台湾)の法律が適用されると推定される可能性があります。 準拠法と紛争解決地は別々に定めることができますが、両者を切り離すと追加のコストが生じます。たとえば「準拠法は米国法、訴訟は台湾の裁判所」と定めた場合、台湾の裁判官は、当事者双方が提出した資料に基づいて米国法の内容を確認し、そのうえで本件に適用しなければなりません。その結果、訴訟は長期化し、判決の見通しも立てにくくなります。 準拠法の選択にかかわらず適用される事項が二つあります。一つは、労働基準法など、契約によって回避できない台湾の規定です。もう一つは、相手方企業を代表して有効に署名できる者が誰かという点です。これは会社がどこで登記されているかによって決まり、相手方が台湾企業であれば台湾法によって判断されます。 紛争解決を安定させるもう一つの手段として、仲裁条項があります。将来紛争が生じたときに訴訟によらず、双方が選んだ仲裁機関の判断に委ねるという定めを、契約に置くことができます。仲裁条項の効力は、契約の他の条項とは別に判断されます。契約全体が後に無効とされた場合でも、この条項は有効に存続し、双方は取り決めに従って紛争を仲裁に付すことができます。
何をするか1. 準拠法条項は必ず設けてください。定めがなければ、どの国の法律が適用されるかは裁判所が判断することになり、リスクを管理しにくくなります。 2. 可能な範囲で、準拠法と紛争解決地は一致させてください。台湾法を準拠法とするのであれば台湾の裁判所を管轄裁判所とし、シンガポール法を選ぶのであれば同国での仲裁とします。 3. 台湾法と自国法のどちらを選ぶかは、利点と欠点を比べて判断してください。 台湾法を選ぶ利点は次のとおりです。(1)台湾で履行する契約であれば、法的環境が安定しており、リーガルチェックの費用も比較的低く抑えられます。(2)万一訴訟になった場合、台湾の裁判所の裁判官が台湾法を直接適用でき、貴社が外国法の内容を立証する必要がありません。欠点は、台湾法の細部に精通していない可能性があることです。たとえば物の瑕疵担保責任、つまり購入したものに欠陥があった場合に相手方の責任を問う権利については、台湾では行使できる期間が比較的短く、長い時効を定める国とは異なります。 自国法または中立的な第三国法を選ぶ利点は二つあります。法的予測可能性が高まること、そして中立的とみなされることが多いことです。欠点は、台湾の裁判所での手続において、外国法の適用を主張する側が、その存在および内容を立証するために高額な費用を負担する点です。立証できなければ、裁判所は最終的に台湾法に基づいて判断することがあります。 ケース: ある外国企業が、台湾の販売店との間で販売店契約を締結しました。双方はメールで条件に合意して履行を開始しましたが、契約書には準拠法条項が設けられていませんでした。その後、代金の支払および商品の瑕疵をめぐって紛争が生じ、外国企業は、より長い請求期間を定める自国法を適用すべきだと主張し、台湾の販売店は台湾法の適用を主張しました。裁判所は、この契約の主たる義務が、販売店による台湾国内での販売行為および代金の支払にあると判断し、台湾を最も密接な関係を有する地と認定して、台湾法が適用されると推定しました。最終的に外国企業は、台湾法が定める瑕疵担保の6か月の短期時効を過ぎていたため、損害賠償を請求できませんでした。