契約に裁判所や仲裁地を書くだけで、国際紛争への備えが完了するわけではありません。手続を開始できるか、資産を保全できるか、取得した判決・仲裁判断を相手方の資産所在地で執行できるかが重要です。台湾はニューヨーク条約の締約国ではなく、外国判決と外国仲裁判断にはそれぞれ承認・執行要件があります。本テーマでは、訴訟、仲裁、調停、和解の費用と適する場面を比較し、債務不履行の催告、存證信函、仮差押え、IP紛争における仮の地位を定める仮処分、国際執行を解説します。契約段階から、管轄、準拠法、証拠、資産所在地を一体で検討できるようにします。 本コーナーは、旭時報 SUNRISE(寧旭メディア)が Startup Island TAIWAN のために企画・制作しています。 監修|法務:中銀法律事務所 財務・税務:urCFO 本コーナーの内容は、2026 年 8 月時点の台湾の法令に基づいています。その後の法改正は反映されていません。個別の案件については、専門家による個別の判断が必要です。
Startup Island TAIWANは、採用チャネル、人材育成プログラム、エコシステムパートナーとスタートアップをつなぎます。大学ネットワーク、スタートアップ求人プラットフォーム、コミュニティイベント、台湾での人材獲得・定着を支援する政府支援プログラムなどのリソースがあります。
台湾ではどちらの手続も有効です。判断の基準は、この契約から生じ得る紛争がどの類型に当たるかです。 仲裁とは、将来紛争が生じたときに訴訟によらず、双方が選んだ仲裁機関の判断に委ねることを、契約であらかじめ取り決めておくことをいい、そこで出される判断を仲裁判断(原語では仲裁判斷)といいます。実務上、紛争が高度な専門技術に関わる場合、秘密保持が必要な場合、仲裁判断を台湾外で執行する可能性がある場合には、外国企業の多くが仲裁を選びます。金額が大きくない場合や、契約当事者以外の第三者が関わる場合には、裁判所での訴訟に利点があります。
なぜそれが重要なのか仲裁には利点と欠点があります。 1. 秘密保持に優れています。台湾の裁判所の訴訟は公開審理が原則で、判決書も司法院のシステム上で公開されます。仲裁手続は非公開が原則であり、仲裁人および手続に関与する者は守秘義務を負うため、営業秘密が関わる商事紛争では保護の程度が高くなります。 2. 期間が短くなります。一般の民事・刑事訴訟は原則として三級三審制で、同一の事件が最大三つの審級で審理されるため、長期化します。仲裁手続は、原則として一度の仲裁判断によって終結します。その効力は裁判所の確定判決と同一であり、通常は上訴が認められません。仲裁判断が仲裁合意の範囲を超えている、仲裁合意が無効である、仲裁廷の構成が法令に反するといった法定の瑕疵がある場合に限り、当事者は裁判所に仲裁判断の取消しを求めることができます。これを仲裁判断取消しの訴えといいます。紛争状態が続く期間は、その分だけ大幅に短くなります。 3. 強制執行の前に、裁判所での手続が一つ増えます。裁判所の判決が確定すれば、勝訴した当事者はそのまま強制執行を申し立て、相手方の財産から回収できます。仲裁判断の効力は同じですが、強制執行するには、原則として、まず裁判所に執行を許可する裁定(原語では准予執行之裁定)を申し立てる必要があります。ただし、裁定を不要とする旨を書面で合意し、仲裁の対象が金銭、代替物、有価証券または特定の動産の給付である場合は、直接強制執行を申し立てることができます。
何をするか仲裁を中心に据えるかどうかは、どのように判断すればよいでしょうか。 1. まず、この契約から生じる紛争が高度な専門技術に関わるかどうかを判断してください。AI アルゴリズム、半導体プロセス、複雑なエンジニアリングといった分野の紛争では、仲裁であれば貴社と相手方がそれぞれその分野に通じた専門家を仲裁人として選任できます。業界に不案内な裁判官が誤った判断に至る可能性は、その分だけ低くなります。 2. 相手方の主たる財産がどの国にあるかを確認してください。その財産が台湾国内になく、台湾で得た結果を現地に持ち込んで回収する可能性がある場合、仲裁判断は台湾の裁判所の判決よりも、現地で承認と執行を得やすいのが一般的です。ただし、財産所在地が台湾と司法共助協定を締結している法域、または実務上台湾の判決を高い程度で承認する法域であれば、裁判所の判決の執行力が仲裁判断に劣るとは限りません。 3. 「時間」がどれだけ重要かを評価してください。台湾法上、仲裁廷は、仲裁人に選任された旨の通知を受けた日から 6 か月以内に判断書を作成しなければならず、必要な場合は 3 か月延長できます。実務上、仲裁の多くは 1 年以内に終結しますが、民事訴訟の三級三審に至った場合、台湾では 3 年から 5 年を要することも珍しくありません。 4. 台湾の裁判所が地元企業に有利に働くのではないかという懸念がある場合は、仲裁地を中立的な第三の法域とする取り決めが可能です。仲裁地の選び方については、別に説明があります。 ケース:ある多国籍の技術コンソーシアムが、台湾企業の中核的なパートナーとなり、技術協力契約を締結しました。台湾企業は、このコンソーシアムの技術的な裏付けにより、政府から事業運営のコンセッション(台湾でいう「特許経営権」)を取得しました。その後、コンソーシアムの技術システムが海外で重大な安全事故を起こし、この台湾企業の取締役会は、リスク管理と事業上の判断から既定の方針を変更し、別のアジア大手メーカーの技術システムの導入に切り替えました。 コンソーシアム側は、台湾のパートナーが先に締結した法的な約束と契約に違反したとして、国際商業会議所(ICC)国際仲裁裁判所に商事仲裁を申し立て、多額の賠償を請求しました。仲裁廷は、国際商事契約、専門技術、エンジニアリング調達に精通した各国の専門家を仲裁人に選任し、中立的な第三の法域で複数回にわたる主張立証が行われました。仲裁廷は最終的に、台湾のパートナーに契約違反の責任があり、コンソーシアムに賠償すべきであると判断しました。仲裁廷は一度の手続で法的拘束力のある判断を示し、双方はこの判断を基礎として商業交渉に入り、コンソーシアムは最終的に仲裁判断の金額を下回る条件で和解し、実際に支払を受けました。台湾側の新しい技術システムも問題なく稼働しました。
主に四つの場面では、仲裁よりも裁判所での訴訟が適しています。請求額が大きくない場合、契約当事者以外の第三者が関わる場合、公開の判決が必要な場合、そして財産の保全や行為の停止を直ちに求める必要がある場合です。 このうち、請求額が大きくない場合に訴訟が適している主な理由は費用です。仲裁の総費用が訴訟より低いとは限らず、外国企業が紛争解決条項を作成する際に判断を誤りやすい点です。
なぜそれが重要なのか1. 裁判所での訴訟は、費用の算定が比較的単純です。裁判所に納める手数料(原語では裁判費)は法定の基準に従って算定されるため、予測しやすく、比較的低額です。また、仲裁人報酬に相当する項目もありません。 台湾の裁判所は、事件ごとに一律の手数料を徴収するのではなく、貴社が相手方に請求する金額を基準に算定します。請求額が大きいほど納付額も増えますが、料率は金額が上がるにつれて下がります。たとえば契約総額が 5,000 万台湾ドルでも、そのうち 800 万台湾ドルの代金のみを請求するのであれば、手数料はその請求額を基礎として、下記の区分に当てはめて算定します。 現行の公告料率によれば、民事財産権訴訟の第一審手数料は、訴訟物の金額または価額に応じて増加し、次のとおり算定されます。金額の単位はいずれも台湾ドルです。 a. 請求額が 10 万以下の場合、1,500。 b. 10 万を超え 100 万までの部分は、1 万ごとに 130。 c. 100 万を超え 1,000 万までの部分は、1 万ごとに 117。 d. 1,000 万を超え 1 億までの部分は、1 万ごとに 88。 e. 1 億を超え 10 億までの部分は、1 万ごとに 77。 f. 10 億を超える部分は、1 万ごとに 66。 請求額が 1 億台湾ドルの場合、第一審の手数料はおよそ 91 万台湾ドルになります。第二審、第三審へ上訴すると、各審級でそれぞれ第一審の 1.5 倍が必要です。この費用は敗訴した当事者が負担しますので、勝訴すれば回収できます。ただし、一部勝訴・一部敗訴となった場合、裁判所は結果の割合に応じて、双方に訴訟費用の一部を負担させることがあります。 2. 仲裁を選ぶ場合、費用の算定方法は裁判所の手数料とはまったく異なります。仲裁は訴訟より期間が短くなりますが、必ずしも安いとは限りません。理由は主に三つあります。 (1)台湾の仲裁費用も、貴社が相手方に請求する金額に応じて段階的に算定されます。裁判所の手数料と同じく、金額が大きくなるほど、適用される料率は低くなります。 (2)仲裁費用には仲裁人報酬も含まれます。複雑な事件で 3 名の仲裁人を選任しても、仲裁手続自体の費用は人数によって増えません。ただし、仲裁人が証拠調査のために出張する際の交通費や食費、宿泊費など、その他の費用が増える可能性があり、総費用が訴訟の裁判所手数料を上回ることがあります。 (3)仲裁手続は集中的かつ専門的であるため、弁護士費用も高くなる傾向があり、専門家証人の費用が別途必要になることもあります。 評価の目安は単純です。請求額が小さいほど、訴訟と比べた仲裁の費用面での不利が明確になる傾向があります。
何をするか紛争解決条項では、どのような場合に裁判所での訴訟を選ぶべきでしょうか。 1. 請求額が大きくない場合は、訴訟を選んでください。仲裁の最低料金は、民事財産権訴訟の裁判所手数料の最低額より高いため、少額の紛争では採算が合いません。 2. 契約当事者以外の第三者が関わる可能性がある場合は、訴訟を選んでください。仲裁条項は、これに署名した当事者のみを拘束します。第三者の同意がなければ、その第三者を仲裁手続に参加させることはできません。裁判所であれば、訴訟参加や共同訴訟によって、複数当事者間の紛争を一括して解決できます。 3. 公開の判決が必要な場合は、訴訟を選んでください。ある事業モデルが台湾で適法であることを確認したい場合や、他の潜在的な侵害者を牽制したい場合、公開される判決は、非公開の仲裁判断よりも社会的な影響力が大きくなります。 4. 緊急を要する場合は、訴訟を選んでください。相手方の財産隠しを防ぐために直ちに財産を押さえる必要がある場合(台湾では假扣押といい、日本の仮差押えに相当します)、または判決前に相手方に行為の停止を求める必要がある場合(台湾では定暫時状態処分といい、日本の仮の地位を定める仮処分に相当します)、台湾の仲裁法も保全の申立てを認めていますが、実務上その執行は裁判所を通じて行われます。直接裁判所に提訴したほうが、手続を一貫して進めやすくなります。国際的な紛争では特に早い対応が求められます。資産が複数の国の間で移動し始めると、後から押さえることは格段に難しくなります。
あります。台湾には商業上の紛争を解決する四つの手続があり、第三者が関与する度合いの低い順に、和解、調停(原語では調解)、仲裁、訴訟です。貴社の状況に合わせて選ぶことができ、最初から訴訟を提起して、その後の取引の可能性を損なう必要はありません。 取引関係を維持したい場合、金額が大きくない場合、早く解決したい場合には、多くの外国企業がまず調停や和解を試みます。一度で決着させ、かつ非公開としたい場合は仲裁を選びます。契約に仲裁条項がなく、相手方も応じない場合には、訴訟が必要になります。これらの方法の最も大きな違いは、相手方が合意した内容を履行しないときに、そのまま裁判所に強制執行を求められるかどうかです。
なぜそれが重要なのか1. 同じ「和解」でも、執行力は大きく異なります。公証を受けていない私的な和解は通常の契約と同じ効力しかないため、相手方が履行しない場合、貴社は改めて訴訟を提起し、裁判所から執行の根拠を得たうえでなければ、強制執行を申し立てられません。ただし、その和解書を公証し、相手方が直ちに強制執行を受け入れる旨を記載していれば別です。この方法で直接強制執行できるのは、一定額の金銭、代替物、有価証券、特定動産の給付、または法律上の要件を満たす不動産の賃貸借・使用貸借終了時の返還などに限られ、すべての和解内容が対象となるわけではありません。これに対し、訴訟上の和解、または調停の成立によって得た結果は、私的な和解より強く、いずれも確定判決と同一の効力を持ち、そのまま強制執行を申し立てられます。 2. 調停は私的な話し合いではありません。中立の第三者が主宰し、主宰するのは裁判官の場合も、調停委員の場合もあります。手続は非公開であり、双方が正面から対立する必要もありません。裁判所の調停が成立した場合、または郷鎮市調停が成立して裁判所の認可を受けた場合、その効力は確定判決と同じで、そのまま執行できます。早期に決着させたい、しかし公開の審理は避けたいという外国企業にとって、有力な選択肢です。 3. 訴訟を提起しても、和解の可能性がなくなるわけではなく、納めた手数料が無駄になるわけでもありません。台湾の民事訴訟には、外国企業が見落としがちな仕組みがあります。すでに訴訟を提起した後でも、裁判官の関与により事件を調停に付すことができます。調停が成立した場合、原告は成立の日から 3 か月以内に、すでに納付した裁判所手数料の 3 分の 2 の還付を裁判所に申し立てることができます。時効が迫っていて、なお交渉を続けたい場合は、先に訴えを提起して時効の完成を防ぎ、その後で交渉に戻ることができます。
何をするか四つの場面で、それぞれ何を選ぶべきでしょうか。 1. 取引関係を維持したい場合は、調停または訴訟上の和解を選んでください。調停では中立の第三者が双方の意思疎通を助けるため、正面からの対立による緊張が和らぎます。手続も非公開であり、双方の面目を保てます。 2. 早さを重視する場合は、まず双方に合意があるかを確認してください。双方の意見がおおむね一致し、直ちに履行する意思があるなら、私的な和解と調停が最も早い方法です。ただし、公的な手続を経ない和解を選ぶ場合は、まず和解内容が直接強制執行の対象となるかを確認したうえで、和解書を公証し、相手方が直ちに強制執行を受け入れる旨を記載して、執行力の不足を補ってください。なお争いが残り、法的な強制力が必要な場合は、仲裁が最も早くなります。 3. 一度で決着させたい場合は、仲裁または訴訟を選んでください。将来、台湾外で執行する可能性がある紛争であれば、仲裁判断のほうが国際的に承認を得やすいのが一般的です。台湾国内でのみ執行するのであれば、裁判所の確定判決も、裁判所の認可を受けた調停調書も、強い執行力を持ちます。 4. 契約に仲裁条項がなく、相手方も応じない場合は、訴訟しかありません。仲裁は双方の合意によって成立するため、契約に仲裁条項がなく、相手方も応じないのであれば、貴社は直接裁判所に提訴するほかありません。裁判所は公示送達、つまり書類を裁判所に掲示して送達されたものとみなす方法を利用できます。適法な送達後も相手方が応じず、正当な理由なく出頭しない場合、裁判所は貴社の申立てにより、一方当事者の弁論に基づく判決を言い渡し、手続を進めて貴社が執行の根拠を得られる状態まで導きます。逆に、契約に仲裁条項があるにもかかわらず相手方が仲裁人の選任を拒む場合、貴社は仲裁機関または裁判所に選任を申し立てる必要があり、手続はより煩雑になります。 5. 調停によるのであれば、まず場を選んでください。台湾には裁判所が行う調停と、郷鎮市が行う調停の二種類があります。後者の調停委員は、必ずしも商業や法律の専門知識を備えているとは限りません。外国企業は、法律の素養がある調停委員または裁判官が主宰する裁判所の調停を優先してください。そのほうが商業上の争点に的確に踏み込めます。調停の費用も、訴訟の裁判所手数料や仲裁費用よりはるかに低額です。 6. 契約を締結する段階で設計し、紛争解決の各段階を契約に書き込んでおくのが最善です。この種の条項は三つの段階に分けられます。第 1 段階として、紛争が生じた後、まず双方の上級幹部、たとえば CEO や VP 級が協議に当たります。期間は契約で自ら定め、実務上は 30 日とすることが多くあります。第 2 段階として、協議が成立しない場合は、まず裁判所に調停を申し立て、調停を経なければ訴訟または仲裁を提起できないものとします。第 3 段階として、調停が成立しない場合に、はじめて仲裁または訴訟に進みます。 ケース:ある美容医療クリニックが、医療機器の販売業者から、全く新しい特許取得済みのチップ技術を用いた数百万台湾ドルの機器を購入しました。使用を始めたところ出力が安定せず、複数の患者が負傷したため、クリニックは残代金の支払を留保し、販売業者に機器の引き取りと賠償を求めました。これに対し販売業者は、医師のパラメータ設定が不適切であって機器に瑕疵はないと主張しました。 双方は正式な訴訟に入る前に、規定に従って訴訟前の調停を経ました。しかし当初担当した調停委員は一般の人であり、美容医療の技術を理解していなかったため、「和気生財(商売は円満第一)」といった専門外の言葉で説得するにとどまり、調停はすぐに不成立となりました。事件が智慧財産及商業法院(知的財産・商業裁判所)に移ってから、状況が変わりました。この裁判所では、裁判官に技術審査官が配置されています。技術的な素養を持ち、裁判官が技術上の争点を理解するのを助ける専門職です。技術審査官が核心に直接踏み込み、機器のデータの異常を指摘したところ、販売業者は技術上の欠陥が専門家に見抜かれたことを理解し、その欠陥が判決書に記載されてインターネット上で公開されることも望みませんでした。裁判官と技術審査官の主導により、双方は最終的に法廷で和解し、販売業者は機器を引き取って手付金を返還し、双方は秘密保持契約を締結しました。
すべての事案に当てはまる答えはありませんが、最も分かりやすい指針が一つあります。台湾のパートナーの資産がある場所を仲裁地に選ぶ、というものです。仲裁廷が最後に示す判断を、台湾の法律では仲裁判断と呼びます。貴社はこれを、相手方の資金・設備・在庫がある場所に持ち込み、その地で執行を申し立てます。その場所の裁判所が仲裁判断の効力を認めるかどうかが、貴社が資金を回収できるかどうかを決めます。 仲裁の分野で最も重要なニューヨーク条約には 170 を超える国が加入しており、締約国は原則として、他の締約国の領域内で作成された仲裁判断を相互に承認し、執行します。台湾は締約国ではありません。そのために仲裁地を自国や第三国に置いた場合、将来その仲裁判断を台湾で執行する段階で、台湾の裁判所に承認を申し立てるという手続が一つ増え、その分の時間と弁護士費用がかかります。
なぜそれが重要なのか1. 台湾は締約国ではありませんが、台湾の仲裁法は制定時にニューヨーク条約を大幅に参考にしています。外国で作成された仲裁判断は、台湾の裁判所による承認の裁定を得た後は、台湾の確定判決と同じ効力を持ち、そのまま強制執行の根拠になります。したがって判断すべきは、台湾が承認するかどうかではなく、台湾で承認を得るまでにかかる時間と費用です。 2. 台湾の裁判所が外国仲裁判断を審査する際は形式審査によります。つまり裁判所は、その仲裁の手続に法律が列挙する瑕疵があるかどうかを見るのであって、どちらが正しいかを改めて認定することはありません。法定の不承認事由がない限り、裁判所は原則として承認します。台湾で事業を営む外国企業にとって、これは自国で既に終了した仲裁手続を台湾でもう一度争う必要がないことを意味します。 3. もう一つの場面は、台湾のパートナーの資産が貴社の自国にあり、台湾での仲裁で得た結果を自国で執行する場合です。このときは自国の法律によります。台湾で作成された仲裁判断にニューヨーク条約をそのまま適用する国もあれば、加入の際に適用範囲を締約国の間に限定し、台湾がその外に置かれる国もあります。この点は台湾法ではなく、自国の法律によって決まります。ただし、貴社は事前に確かめられます。契約を結ぶ前に自国の弁護士に一つ、自国が台湾で作成された仲裁判断を承認するかどうかを尋ねてください。その答えが、仲裁地を台湾、自国または第三地のいずれに置くかを左右します。 4. どちらの方向であっても、紛争を仲裁に付したほうが、裁判所での訴訟によるよりも国境を越えた執行がしやすいのが通常です。台湾自身がその例です。外国の裁判所の判決については、相互主義の要件が満たされない場合、台湾の裁判所はその効力を認めません。外国仲裁判断はこれと異なり、相手国が台湾で作成された仲裁判断を承認したことがない場合でも、台湾の裁判所は承認の申立てを却下することができるものの、必ず却下するわけではありません。
何をするか仲裁地は次の順序で決めてください。 1. まず相手方の資産がどこにあるかを確かめます。将来、貴社が仲裁判断を持ち込んで回収する場所が、仲裁地の第一候補です。相手方の資金・設備・在庫がいずれも台湾にあるのなら、仲裁地は台湾を選びます。 2. 次に、他の四点を見ます。(1)仲裁人を務められる専門家がその地で見つけやすいか、現地の弁護士とやり取りしやすいか。(2)仲裁の費用が妥当か。(3)現地の法制度がこの種の紛争に適切に対応できるか。たとえば争点の中心が技術ライセンスであれば、現地の裁判所と仲裁機関に技術紛争を扱った経験が十分にあるかを見ます。(4)その地で作成された仲裁判断が、貴社が執行したい場所で効力を持つか。 3. 台湾を仲裁地にすると相手方の本拠地で不利になるのではないかと懸念する場合、契約で次の三点を定めることができます。(1)仲裁地を中立的な第三地と定めます。(2)国際商業会議所(ICC)やシンガポール国際仲裁センター(SIAC)など、国際的な仲裁機関の規則を採用します。(3)首席仲裁人、すなわち仲裁廷の長を、いずれの当事者とも異なる国籍を有する者とします。この三点の目的は、手続がどちらにも偏らないようにすることです。 4. 仲裁地をどこに選ぶ場合でも、将来の承認・執行手続で問題が生じるリスクを抑えるため、契約で次の三点を定めておくことが望ましいといえます。(1)双方の送達先住所を明記し、仲裁手続の書類が適切に送達されるようにします。(2)常設の仲裁機関、すなわち整備された規則と事務局を備えた機関を選び、個別に仲裁廷を組成することは避けます。(3)仲裁手続の言語を英語と定めます。 ケース:ある外国企業A社が、自国で作成された仲裁判断を台湾の裁判所に持ち込み、承認の裁定を申し立てました。この会社の本国と台湾との間に国交はなく、台湾もニューヨーク条約の締約国ではないため、不利に見える条件が二つ同時にありました。 それでも台湾の裁判所はこの仲裁判断を承認しました。裁判所の理由は次のとおりです。相互主義は、相手国が先に台湾の仲裁判断を承認していることを必ずしも要求するものではありません。相手国の裁判所が過去に台湾の判決を承認した事実があるか、または将来承認することが客観的に期待できるのであれば、相互主義の適用が認められます。
原則として、直ちに解除することはできません。納期遅延の場面では、まず給付遅延と給付不能を区別する必要があり、それぞれ手続が異なります。給付遅延とは、履行が可能であるにもかかわらず期限を過ぎている状態をいいます。この類型では、まず相当の期間を定めて履行を催告し、その期間が過ぎても相手方が履行しない場合に、はじめて有効に解除できます。上記の催告を経ずに解除しても、解除の効力は生じません。 給付不能とは、相手方が契約上の義務をもはや履行できない状態をいいます。この類型では催告は不要で、貴社はただちに損害賠償を請求し、契約を解除できます。解除した後も損害賠償の請求は妨げられず、両者は両立します。最終的にどれだけ回収できるかは、契約締結時に違約金条項と損害賠償の範囲をどう定めたかによります。
なぜそれが重要なのか1. 催告は、行うだけでなく、その内容と送達の状況を証明できる記録を残しておく必要があります。催告では相当の期間を定め、相手方に履行の機会を与えなければなりません。実務上、外国企業が最も陥りやすい失敗は、催告をしなかったことではなく、後になって、相当の期間を定めて催告したことを証明できない点にあります。これが立証できないと、裁判所に解除の効力を認められず、契約は存続したままとなり、解除を理由として既払代金の返還を求めることもできないおそれがあります。 2. 催告が不要となる場合が一つあり、定期行為といいます。定期行為とは、特定の時期に履行しなければ契約の目的を達成できない場合をいいます。契約の性質または当事者の合意によりこれに当たるとき、たとえば季節商品や特定の日に行う公演などで、相手方がその時期に給付しないときは、催告を経ずに解除できます。この例外に当たるかどうかを後で争うリスクを抑えるため、契約締結の段階で明確に定めておいてください。 3. 相手方がもはや履行できない場合は、手続が異なります。給付不能が相手方の責めに帰すべき事由による場合、貴社は催告を要せず、ただちに損害賠償を請求し、契約を解除できます。納期の遅延とは大きく異なりますので、書面を送る前に、その事案がどちらの類型に当たるかを見極めてください。 4. 解除は損害賠償請求権の放棄ではありません。解除権の行使は損害賠償の請求を妨げず、解除の後も、相手方の違約によって生じた損害を請求できます。外国企業は両者を二者択一の関係にあると誤解し、対応の時機を逸しがちです。 5. 違約金条項に「懲罰的」と書くかどうかで、結果は大きく変わります。契約に別段の明示がない限り、違約金は相手方の不履行によって生じた損害賠償の総額として扱われ、その違約金を取得すると、それ以上に自社の損害を立証して追加請求することはできません。契約に懲罰的違約金と明記した場合は、違約金の請求に加えて、相手方に債務の履行を求め、または不履行による損害賠償を別に請求できます。いずれの場合も、金額が過大であれば裁判所は相当な額まで減額できます。ただし減額を求める側、すなわち金額が過大であると主張する当事者が自ら立証する必要があり、裁判所が代わって証拠を収集することはありません。 6. 台湾の民事訴訟では、第一審と第二審で自ら選任した弁護士の費用は訴訟費用に含まれません。したがって勝訴しても、相手方が貴社の弁護士費用を負担することはありません。第三審のみ、法律上弁護士の選任が義務づけられているため、弁護士報酬が訴訟費用の一部となります。弁護士費用を相手方に請求できるようにするには、契約締結の段階でこれを損害賠償の範囲に明記する必要があります。
何をするか相手方が既に納期を遅延している場合は、まず前の二項から始めてください。契約締結前であれば、後の四項を契約に書き込んでください。 1. まず書面で催告し、証拠を残します。催告には、いつまでに履行するよう求めるかを記載し、その期間は相当なものとします。発送と受領の記録が残る方法で送付し、その記録を併せて保管してください。この記録が、後に解除の適法性を左右します。 2. 期間が経過しても相手方が履行しない場合に、解除の通知を送ります。順序が逆になると、先に行った手続が意図した効果を生じないおそれがあります。 3. 催告を経ずに解除できる場合を契約に明記します。たとえば、30 日を超える遅延があった場合には催告を要せず解除できる旨を定めるほか、一定の条件を満たした場合に契約が自動的に解除される旨を別に定めることもできます。この 30 日という期間は、法律上の期間ではなく、当事者が契約で定めるものです。 4. 違約金条項には違約金の法的性質を明記します。違約金に加えて履行や賠償を請求する余地を残したいのであれば、条項に懲罰的違約金である旨を明記してください。条項に明記がない場合、その金額は合意された損害賠償の総額として扱われます。 5. 損害賠償の範囲を明確に定めます。弁護士費用、訴訟費用、仲裁費用、および信用や評判の毀損によって生じた損失を含めると明記してください。 6. 契約上の相殺権を定めます。一方が違約した場合に、他方が自ら保有する保証金または支払期日が到来したが未払の金員から、違約金または損害賠償額を差し引くことができる旨を定め、この相殺権が契約の解除によって影響を受けないことを明記してください。