日本では、登記完了は出発点にすぎません。株式会社・合同会社・支店の選択、資本金、持分、投資家の所在地、出資方法が初日から税務経路を左右します。消費税・中小企業税制の基準、ストックオプション、源泉税、CFC、現物出資、増減資、清算、初年度費用を整理し、設立前に総コストを把握するためのテーマです。 本コーナーは、旭時報 SUNRISE(寧旭メディア)が Startup Island TAIWAN のために企画・制作しています。 監修|日本法務:法律事務所 ZeLo 日本税務:税理士法人ZeLo 台湾法務:中銀法律事務所 台湾財務:urCFO 本コーナーの内容は、2026 年 8 月時点の日本および台湾の法令に基づいています。その後の法改正は反映されていません。個別の案件については、専門家による個別の判断が必要です。
税金の計算方法について、両者に根本的な違いはありません。違いが生じるのは支店を選んだ場合です。支店を設ければ、台湾本社そのものが日本の税務に組み入れられ、メリットとデメリットの両方が生じます。 日本に拠点を置く方法は二つあります。台湾法人の日本支店として登記する方法と、独立した日本法人を設立する方法です。日本の会社形態としてよく用いられるのは株式会社(KK)と合同会社(GK)で、いずれも独立した日本法人です。台湾スタートアップが日本に進出する場合、通常は KK または GK の設立が中心となります。 支店であっても、KK・GK であっても、法人税と消費税の計算方法に根本的な違いはありません。「どれが一番安いか」を比較して試算を繰り返す必要はありません。
なぜ二つの選択肢の本当の違いは、税率ではなく、誰が納税者になるかにあります。KK や GK を設立した場合、その日本法人自体が納税者となります。支店の場合、日本の税法上、支店は独立した法人ではなく、納税者は台湾本社そのものです。以下に述べるメリットとデメリットは、いずれもこの点から生じます。 支店を選ばれる場合、日本に設ける支店にはメリットとデメリットの両面が加わる点にご留意ください。メリットは、台湾本社の経費(一般管理費など)を日本支店に配分できることです。デメリットは二つあります。一つ目は、税務調査の際に、日本支店に配分された本社の共通経費の妥当性を証明するため、台湾本社の帳簿の提出を求められることです。妥当性を証明できない場合、配分した共通経費の一部または全部が損金として否認され、その分だけ日本支店の課税所得が増加し、追徴課税(過少申告加算税・延滞税を含む)を受けることになります。二つ目は、消費税の免税判定が、支店の場合、支店単独の資本金ではなく台湾本社の資本金の額で行われることです。
どうする1. 拠点の形態を決める際は、日本の拠点を日本法人として登記してください。KK でも GK でも構いません。考えるべきはもう一つの問いです。支店でなければならない理由が貴社にありますか。ないのであれば支店は選ばないでください。台湾本社の帳簿を税務当局から求められることもなくなります。 2. 支店でなければならない理由がある場合は、着手する前に二点を計画に組み込んでください。一点目は、台湾本社から日本支店に配分する経費について、配分の根拠をその都度算定できる形で残しておくことです。税務調査の段階でさかのぼって用意することのないようにしてください。二点目は、初年度の予算を組む際に、消費税が免除されることを前提にしないことです。
事例ケース:ある台湾企業が初期費用を抑えるために日本支店を設立しました。しかし、税務調査の際に、日本支店に配分された本社の共通経費の妥当性を証明するため、台湾本社の詳細な財務データの提出を求められ、説明に時間を要しました。
他に制約がなければ、設立時に登記する資本金は 999 万円以下に設定してください。下限は、事業上必要な運転資金と、取引先や金融機関から見た信用の観点で判断してください。この金額を左右するのは二つの税です。一つは消費税です。もう一つは法人住民税の均等割で、赤字であっても毎年必ず発生する定額の負担です。 二つの税の分かれ目は、いずれも 1,000 万円ですが、見ている金額が異なります。消費税が見るのは、登記上の資本金の額が「1,000 万円未満」であるかどうかです。資本金を 999 万円とすれば、日本子会社は設立から最大 2 事業年度、消費税の申告も納付も不要です。ちょうど 1,000 万円とした場合には、初年度から納付義務が生じます。 均等割が見るのは、登記上の資本金に資本準備金を加えた合計額です。基準は「1,000 万円以下」であり、合計額がちょうど 1,000 万円であれば最も低い区分にとどまります。東京 23 区の場合、資本金等の額が 1,000 万円以下かつ従業員 50 人以下であれば、均等割は年 7 万円です。1,000 万円を超えると 18 万円以上に跳ね上がります。 ただし、この目安には前提があります。ほかに満たすべき基準がないことです。最も多いのは在留資格「経営・管理」です。2025 年 10 月以降、この在留資格に求められる資本金または出資の総額は 3,000 万円以上となりました。上記の目安を大きく上回りますので、この在留資格を取得される場合、上記の目安は当てはまりません。もう一つは、有料職業紹介事業などの業種別の許認可で、別途の資産要件があります。
なぜ均等割は、地方税の中でも固定的な負担であり、利益の増減に連動しません。その事業年度が赤字であれば法人税はゼロになりますが、均等割は変わらず発生します。したがって、資本金等の額が 1,000 万円を超えた場合、増加する均等割は一度きりの費用ではなく、毎年繰り返し発生する支出となります。
どうする1. 資本金の額を決める日には、二つの数字を同時にご確認ください。登記する資本金は 999 万円以下とし、その金額は事業上必要な運転資金と信用を踏まえて決めてください。あわせて、資本金と資本準備金の合計額を 1,000 万円以下に抑えてください。いずれも設立登記の時点で確定します。後から変更するには、増資または減資の手続きが必要になります。 2. 金額を下げる前に、二つの点をご確認ください。在留資格「経営・管理」を取得する必要があるか。業種別の許認可が必要か。いずれかに該当する場合は、まずそちらの基準に合わせて金額を決めてください。
事例ケース:日本の顧客に対する信用力を高めたいという理由で、台湾親会社が日本子会社の資本金をきっちり 1,000 万円として設立しました。1,000 万円「未満」ではなく「ジャスト 1,000 万円」であったため、この子会社は設立初年度から消費税の納税義務者となりました。この事実が判明したのは設立直後であり、税務上のメリットを享受できませんでした。
付与すること自体は可能ですが、日本の税制優遇を受けることは実務上極めて困難です。ストックオプションとは、従業員が将来あらかじめ定めた価格で株式を購入できる権利です。日本にはこれに対する税制優遇がありますが、その前提は、対象となる株式を日本の会社が発行していることです。台湾親会社の株式は、この前提に当てはまりません。 日本の税制適格ストックオプションは、従業員が最終的に手にする金額を左右します。税制優遇を受けられない場合、従業員は権利を行使したその時点で、行使益が給与所得として総合課税の対象となります。税制優遇を受けられる場合は、株式を売却して現金化した時点まで課税が繰り延べられ、分離課税として税率も低くなります。
なぜ日本の税制優遇は、対象となる株式を発行する会社に紐づいています。制度が想定しているのは、日本の会社が発行する株式を対象とするストックオプションです。2024 年度(令和 6 年度)の税制改正では、税制適格ストックオプションの要件が確かに緩和されました。しかし、緩和された項目のいずれも、外国親会社の株式を対象とするストックオプションを扱うものではありません。 外国の会社が発行する株式を対象とするストックオプションについては、この制度上、明確な適用要件が定められていません。要件を満たすためには、複雑な評価や手続きが必要となります。
どうする1. 日本子会社の従業員をストックオプションで引き留めるのであれば、日本子会社自身の株式を対象として設計してください。台湾親会社の株式を対象とすることは避けてください。 2. 株式の構成に関わる事項ですので、報酬設計の段階から、日本の税務と法務を設計に加えてください。従業員が権利を行使する段階になってから設計を変更しようとしても、間に合いません。
事例ケース:台湾親会社が、日本子会社のカントリーマネージャーに対し、台湾親会社自身の株式を対象とするストックオプションを付与しました。この設計は日本の税制適格要件を満たしていなかったため、権利行使時に、行使益が「給与所得」として総合課税の対象となり、最高 55% の税率が適用されました。付与前に日本の要件に沿って設計していれば、この利益は株式の売却時に、分離課税として約 20% で済んでいました。
日本側でまず源泉税が差し引かれます。必要な手続きをしなければ 20.42%、期限内に届出書を提出すれば 10% に軽減されます。 この届出書は、日本子会社が所轄の税務署に提出します。提出期限は配当の支払日の前日です。正式な名称は「外国居住者等所得相互免除法に関する届出書」です。台湾親会社が日本子会社から受け取る配当は、日台民間租税取決めにより源泉税が 10% に軽減されます。保有割合・保有期間の要件はありません。 期限内に提出できなかった場合は、いったん 20.42% で源泉徴収された上で、後から差額の還付を請求することになります。ただし、これは別途の手続きであり、還付までには時間を要します。
なぜこの軽減は、自ら必要な手続きをして初めて受けられます。要件を満たしているという理由だけで、税務署が自動的に低い税率を適用することはありません。配当の支払日の前日までに届出書が税務署に届いていなければ、翌日の支払時にはまず 20.42% が差し引かれます。日本と台湾との間には政府間の租税条約がなく、この軽減は民間の租税取決めと、それを実施するために日本が定めた国内法(外国居住者等所得相互免除法)によるものです。届出書の名称にはこの国内法の名前が入っており、「租税条約」ではありません。書式を入手される際は、名称をご確認ください。
どうする1. 配当を決議する取締役会の議題に、届出書の作業スケジュールもあわせて組み込んでください。提出期限は配当の支払日の前日であり、決議日でも、年度の申告期でもありません。 2. 手続きの前に、届出書の提出状況をご確認ください。10% の軽減に保有割合・保有期間の要件はなく、期限内の届出が必要です。
事例ケース:日本子会社から台湾親会社へ初めて配当を実施した際、届出書の提出を失念していました。その結果、原則どおり 20.42% が源泉徴収され、台湾側での受取額が想定より大幅に減少しました。後日、還付請求の手続きを行いましたが、実際に還付されるまでに数か月を要し、親会社の資金繰りに一時的な影響を与えました。
技術や IP を現物出資すると、台湾親会社から日本子会社への資産の譲渡として扱われ、含み益(譲渡益)は出資者である台湾親会社側に生じます。 譲渡とみなされる以上、そこには価格が必要です。移転価格税制の観点から、適正な時価評価が求められます。同一グループ内の取引であっても、第三者に譲渡する場合と同じ価格でなければなりません。評価された時価が帳簿上の価額を上回れば、その差額は台湾親会社側に生じる含み益(譲渡益)です。台湾親会社が日本に PE を持たない通常のケースでは、この譲渡益は日本の国内源泉所得に該当せず、日本では課税されません。課税の有無は台湾側の税制の問題となります。 実務上、この方法が選ばれることは多くありません。台湾親会社は従来どおり金銭出資を行い、日本子会社はその資金で台湾親会社から当該技術を買い取ります。あるいは台湾親会社とライセンス契約を結び、使用料を支払います。この方が手続きは圧倒的に簡明です。
なぜ最も重要なのは価格の決め方です。日本の税務当局は移転価格の観点から、同一グループ内の取引であっても、第三者に譲渡する場合と同じ価格であることを求めます。そのため現物出資を行う場合には、まず外部の専門家による評価が必要となり、その費用は小さくありません。さらに、評価を取得したとしても、その評価が税務当局に否認されるリスクを負うことになります。これらの負担は、いずれも事業を開始する前の段階で生じます。
どうする1. 出資の方法を決める段階で、特段の事情がなければ、技術や IP を現物出資するという選択肢は外し、金銭出資に切り替えてください。 2. 日本子会社は、その資金で台湾親会社から当該技術を買い取るか、台湾親会社とライセンス契約を結んで使用料を支払う形にしてください。
事例ケース:台湾のテック企業が、自社開発のソフトウェアのソースコードを現物出資して日本法人を設立しようとしました。しかし、無形資産の適正な時価評価(バリュエーション)に数百万円の専門家費用がかかること、さらに日本の税務当局から移転価格の観点で否認されるリスクがあることが分かりました。この二点を踏まえ、現物出資は断念しました。代わりに、最低限の金銭出資で会社を設立し、ソフトウェアについては、台湾親会社と日本法人との間でライセンス契約を締結し、売上に応じたロイヤルティを支払う形に変更しました。
日本の税制には、資本金 1,000 万円と 1 億円という二つの境界線があり、これを超えると優遇措置は減るのではなく、適用対象外となります。 一つ目の境界線は 1,000 万円です。資本金がこれを超えると、消費税の免税事業者の要件から外れ、法人住民税の均等割も増額されます。均等割は、損益にかかわらず毎年発生する地方税です。 二つ目の境界線は 1 億円です。資本金がこれを超えると、中小企業向けの優遇税制がすべて適用対象外となります。具体的には、(1) 法人税の軽減税率、(2) 交際費の損金算入枠、(3) 少額減価償却資産の特例、(4) 欠損金の 100% 繰越控除です。さらに「外形標準課税」の対象となります。外形標準課税は、付加価値や資本金といった事業規模に応じて課される事業税であり、損益とは連動しません。赤字であっても課税されます。
なぜ増資の際、多くのスタートアップは評価額と持分比率に目が向きますが、登記される資本金の額が大きくなると、固定的に発生する税も増えていきます。日本では、資本金が境界線を超えた時点で、中小企業向けの優遇は割り引かれるのではなく、すべて適用対象外となります。とくに外形標準課税にはご留意ください。利益の多寡ではなく事業規模を基準とするため、赤字の年度であっても課税されます。まだ黒字化していないにもかかわらず、資本金が大きいスタートアップにとって、この項目は見落とされることがあります。
どうする1. 次回の増資条件を確定される前に、増資後に登記される資本金の額を算出し、1,000 万円と 1 億円の境界線を超えるかどうかをご確認ください。 2. 超える場合には、その資本金の額が本当に必要かどうかを、あらためてご検討ください。融資や取引先からの信用確保など、具体的な必要性があるかという観点から検討してください。
事例ケース:日本事業が好調な台湾スタートアップが、大規模なプロモーション資金として台湾親会社から 1 億 5,000 万円の増資を受けました。これにより資本金が 1 億円を超え、中小企業の特例から外れただけでなく、「外形標準課税」の対象となりました。その年は先行投資で多額の赤字でしたが、資本割や付加価値割として数百万円の地方税(事業税)が発生する事態となりました。その後、無償減資を行って資本金を 1 億円以下に戻す手続きを行いました。
残余財産の分配額のうち、「資本金等の額」を超える部分は、税務上「みなし配当」として取り扱われます。 「資本金等の額」とは、株主が当該子会社に払い込んだ資本の額です。登記簿上の資本金の額のみを指すものではなく、資本準備金として計上された部分を含みます。株式の発行に際して払い込まれた額のうち、資本金として計上されなかった部分は、資本準備金として計上されます。清算に際して台湾親会社へ分配する総額から、この額を差し引いた残りが、日本子会社が稼得し内部に留保してきた利益に相当する部分であり、これが「みなし配当」となります。 この部分は配当として取り扱われますので、通常の配当と同様に、日台租税取決めが適用されます。日台租税取決めは、双方の民間機関が締結したものであり、政府間の条約ではありません。要件を満たせば、日本側で差し引かれる源泉税率は 10% に軽減されます。手続きの詳細は、日本子会社から台湾親会社への配当を扱った設問をご参照ください。
なぜ会社を畳む際、残った資金を送金すれば終わりだとお考えになりがちですが、税務上の処理が残ります。日本の税務が見ているのは「送金する」という行為ではなく、その資金の構成です。分配額には一つの線があり、その線を超える部分が配当として課税されます。この線がどこに引かれるかによって、台湾へ資金を戻す前に日本で納付する税額が決まります。
どうする1. 清算を決定される前に、二つの数字を算出してください。一つは税務上の「資本金等の額」、すなわち登記簿上の資本金に、資本準備金として計上された部分を加えた額です。もう一つは、台湾親会社へ分配する予定の総額です。両者の差額が課税対象となる金額です。 2. この部分に 10% が適用されるか原則税率が適用されるかは、期限内に手続きを済ませたかどうかで決まります。手続きの内容は配当を扱った設問をご参照のうえ、清算を決定される時点で、あわせてスケジュールに組み込んでください。
設立時には、法定額または法定の計算方法が定められた一時的な費用があります。このほか専門家報酬などの変動費用もありますが、見落とされやすいのは毎月発生する二つの固定費です。 まず一時的な費用です。株式会社の設立登記には登録免許税がかかります。金額は資本金の額の 1000 分の 7 で、これが 15 万円に満たない場合は 15 万円です。合同会社も 1000 分の 7 で、下限は 6 万円です。株式会社はこのほかに定款の認証が必要で、資本金の額が 300 万円以上の場合、手数料は 5 万円です。合同会社に定款の認証は不要です。定款を紙で作成する場合は収入印紙 4 万円がかかりますが、電子定款であれば不要です。 次に、初年度から発生する固定費です。 1. 税務顧問料(記帳代行を含む):日本では、毎月の記帳、給与計算、年末調整、そして極めて複雑な法人税の確定申告を自社で行うのはほぼ不可能です。初年度から年間数十万円〜の税理士報酬が固定費として発生します。 2. 社会保険料の会社負担分:役員報酬や給与を支払う場合、その支払額の約 15% に相当する社会保険料を、会社が毎月追加で負担します。これは税金ではありませんが、キャッシュフロー上は非常に重い固定費となります。 このほか、損益にかかわらず毎年発生する法人住民税の均等割があります。金額と区分は、設立時の資本金の額を扱った設問をご参照ください。
なぜ台湾のスタートアップが日本の予算を組む際、設立時の登記費用は正確に見積もる一方で、初年度の固定費が抜け落ちることがあります。この二つが見落とされやすいのは、設立費用とは性質が異なるためです。設立費用は一度支払えば終わりますが、税務顧問料と社会保険料は、会社にまだ売上がない段階から毎月支払い続けることになります。社会保険料に至っては税金ですらありませんが、キャッシュフロー上は同じく重い固定費です。
どうする1. 予算を組まれる際は、「設立時の一時的な費用」と「毎月発生する固定費」を分けて計上してください。同じ欄にまとめないことが重要です。 2. 固定費の欄には、予算作成の当初から税理士報酬と社会保険料の会社負担分を入れてください。いずれも初年度から発生するものであり、売上が立つまで待ってはくれません。