MARKET FAQ


税務

日本の税務は、利益が出てから始まるものではありません。設立、初回決算・請求書、越境送金、継続的に交渉・締結する担当者が、申告・納税義務を変え得ます。PE、法人税・消費税、青色申告、インボイス、配当・ロイヤルティ送金、外為報告、税務上の軽減措置を整理し、期限・税務区分・書類・資金繰りを事前にそろえるためのテーマです。 本コーナーは、旭時報 SUNRISE(寧旭メディア)が Startup Island TAIWAN のために企画・制作しています。 監修|日本法務:法律事務所 ZeLo 日本税務:税理士法人ZeLo 台湾法務:中銀法律事務所 台湾財務:urCFO 本コーナーの内容は、2026 年 8 月時点の日本および台湾の法令に基づいています。その後の法改正は反映されていません。個別の案件については、専門家による個別の判断が必要です。

6. 税務

まだ日本に法人を設立しておらず、担当者を日本に派遣して営業活動を行っているだけです。この場合、日本で課税されることはありますか。

まず二つに分けて考える必要があります。日本には大きく分けて①法人税(直接税)と②消費税(間接税)の 2 種類があり、それぞれ分けて整理する必要があります。 1. 法人税:ポイントは、日本に PE(恒久的施設)があるかどうかです。外国法人の場合、日本に PE があるかどうかで課税関係が変わってきます。PE があれば、日本国はその法人に対して課税権を持ち、PE がなければ法人税が課税されることはありません。PE とは、外国法人が日本国内でその事業の全部または一部を行っている場所をいい、次の 4 つの形態があります。 (1) 事業所 PE:支店・事務所・工場等の固定的な事業場所。 (2) 建設 PE:6 か月を超える工事等。 (3) 代理人 PE:日本であなたに代わって反復的に契約を締結する者。実体オフィスがなくても該当します。 (4) サービス PE:12 か月中 183 日超の役務提供(コンサル含む)。 純粋な調査・購入・情報収集・保管等の「準備的・補助的活動」は、原則として PE を構成しません。 2. 消費税:あなたの台湾法人が日本の一般消費者に対して直接クラウドサービスやアプリのサブスクリプションを提供している場合、日本市場の基準期間(前々年)の課税売上が 1,000 万円を超えれば、あなたの台湾法人自身が日本で登録し、消費税を納めることになります。これは PE の有無とは一切関係がありません。PE がなくても、消費税や一定の国内源泉所得(使用料・配当など)については、日本で課税されることがあります。

なぜ

上記の 4 つの形態、および 6 か月・183 日という認定期間は、いずれも日台租税取決めにおけるものです。日台租税取決めは、日本と台湾それぞれの民間機関が締結した租税に関する取決めであり、政府間の条約ではありません。台湾スタートアップが特に注意したいのが、日本国内法と租税取決めとの相違点です。サービス PE と建設 PE における認定期間は、この二つのルールで異なります。 どちらの法でも PE になる典型行為は 2 つあります。1 つは「締結権限を実際に持って反復行使」する場合、もう 1 つは「倉庫を置いて現地で実際に履行」する場合です。 人と活動の態様が、日本に課税権があるか否かを決めます。つまり出発点は、日本で会社を登記しているかどうかではなく、あなたの人員が日本で何をし、どれだけの期間滞在したかです。

どうする

1. まず、日本における人員と活動を棚卸ししてください。日本であなたに代わって反復的に契約を締結している人はいませんか。日本に倉庫を置き、実際にそこから出荷していませんか。工事やコンサルティングの役務提供が認定期間を超えていませんか。この 3 つのうち 1 つでも当てはまれば、PE の問題はあなたの会社のものです。会社を登記していないことを理由に、問題がないとみなすことはできません。 2. 日本に「恒久的施設」があるかどうかを判断する際に見るのは、その場所に何回通ったかではなく、その場所を自由に使用できるかどうかです。定期的に他社のオフィスに通って打ち合わせを行うだけであれば、原則として PE には該当しません。固定の専用デスクや専用の部屋を常時利用できる状態になると、固定場所 PE に該当する可能性が高まります。 3. 消費税は分けて計算してください。あなたの台湾法人が日本の一般消費者から直接サブスクリプション料を受け取っている場合は、基準期間の課税売上が 1,000 万円を超えていないかを確認してください。超えていれば、登録も納税もあなたの台湾法人自身が行うことになり、PE の有無とは関係がありません。

事例

ケース 1:日本法人も自社のオフィスも持たない台湾スタートアップの事例です。営業責任者が毎週決まった曜日に日本のコンサルティング会社のオフィスを訪れ、会議室を借りて、どの代理店を選ぶか、物流をどう構築するかを話し合っていました。これが数か月続いた段階で、そのオフィスが自社の PE とみなされるのではないかという懸念が生じました。結論としては、原則として該当しません。固定場所 PE が成立するには、その場所が会社にとって「自由に使用できる事業の場所」である必要があります。必要なときに借りているだけで、自ら使用を決める権限はなく、毎週通っていても訪問者にとどまります。 ケース 2:同じく日本法人もオフィスも持たない台湾のコンサルティング系スタートアップの事例です。日本市場を一人の従業員に任せ、東京の自宅を日本業務の拠点とするよう依頼しました。その従業員はこれを承諾し、自宅の一室をオフィスとして、毎日そこで日本の顧客に対応していました。こちらの結論は逆で、その自宅が会社の PE に該当する可能性があります。従業員が単に在宅で勤務するだけで直ちに PE となるわけではありませんが、会社が自宅を日本業務の拠点とすることを予定・要請し、中核的な事業活動が継続してそこで行われている場合、その場所は会社が自由に使用できる事業の場所となります。

2 つのケースの違いは、何回通ったかでも、その建物が誰のものかでもありません。その場所の使い方を自ら決められるかどうかです。打ち合わせのために借りる会議室は、原則として該当しません。会社が拠点として指定し、中核的な事業活動が継続して行われている自宅は、該当する可能性があります。
日本子会社が利益を出しました。この利益を台湾の会社へ戻したいのですが、送金の前に、日本の会社法上どのような手続が必要でしょうか。

まず、日本でどの進出形態を選んでいるかをご確認ください。会社法のうち剰余金の配当を規律する部分が対象としているのは、日本で設立された会社です。日本「支店」の場合は本店への利益送金であり、同じ台湾法人の内部での資金移動ですので、会社法の配当規制は及びません。一方、日本「子会社(現地法人)」の場合は別の法人ですので、資金は配当という形で台湾親会社へ戻ることになり、会社法がまず関門を設けます。 1. 株式会社(KK):配当は、原則として株主総会の決議(一定の場合は取締役会決議)を経て行われます。また、会社法上の分配可能額規制が適用されるため、配当できる金額には法定の上限があります。分配可能額は会社法および会社計算規則に基づいて算定され、これを超える配当(いわゆる「タコ配当」)を行った場合には、一定の場合、取締役等が会社に対して填補責任を負うことがあります。 2. 合同会社(GK):合同会社の出資者は「株主」ではなく「社員」と呼ばれます。出資をした人を指す言葉で、従業員のことではありません。合同会社には、株式会社に適用される分配可能額規制は適用されません。一方で、利益の配当に関する制限があり、利益を超える配当には一定の制限が設けられています。また、合同会社は株式会社に比べて定款自治が広く、配当の方法や時期などを定款で柔軟に定めることができます。なお、利益を社員に配当することと、出資そのものを払い戻すこととは別です。出資そのものを払い戻すためには、出資価額(資本金)の減少手続を経る必要があり、自由に出資を返還することはできません。 3. 日本子会社を台湾親会社 100%出資の一人合同会社(GK)とする場合、株式会社のような株主総会や取締役会を経る必要はなく、唯一の社員による決定で利益配当を行うことができます。そのため、実務上の意思決定や手続は株式会社に比べて大幅に簡素です。

なぜ

日本子会社が株式会社である場合、台湾へ戻せる金額を決めるのは、財務諸表上の繰越利益剰余金の額でも、手元の現金の額でもありません。会社法および会社計算規則に基づいて算定される分配可能額です。この二つの数字は同じではなく、分配可能額のほうが低くなることがあります。合同会社の場合は分配可能額規制が適用されませんので、利益の配当に関する制限と自社の定款で確認することになります。また、株式会社であれば株主総会または取締役会の決議、合同会社であれば社員の決定が必要です。この手続はいずれも送金の前に済ませるものであり、送金の後から整えるものではありません。

どうする

1. まず、日本の拠点が支店なのか子会社なのかをご確認ください。支店から本店へ戻す資金は同じ法人の内部での送金であり、子会社の場合は配当の手続を経ることになります。 2. 子会社の場合は、登記を確認し、株式会社(KK)か合同会社(GK)かを特定してください。両者で上限の算定方法も決議の方法も異なります。合同会社であれば、定款もあわせて確認し、配当の方法と時期がどのように定められているかをご確認ください。 3. 会社形態に応じて金額上の制限をご確認ください。株式会社は分配可能額を算定し、合同会社は利益の配当に関する制限と定款を確認します。そのうえで、それぞれに必要な決議または決定の手続を完了させてください。 4. 税務は別に確認してください。日本子会社が台湾親会社へ配当を支払う際には、日本側で税務上の手続が生じ、支払の前に済ませておくべき手続もあります。税率や手続の詳細は税法の領域であり、会社法のこの関門には含まれません。

事例

ケース:台湾のあるスタートアップの日本子会社(株式会社)が、設立 3 期目で初めてまとまった利益を計上しました。台湾親会社には資金需要があり、期末に約 5,000 万円を配当として台湾へ戻したいと考え、日本子会社の経理担当者もすぐに銀行送金の準備に取りかかりました。ところが、送金直前になって二つの問題が見つかりました。一つ目は、担当者が「繰越利益剰余金があるので、その範囲であれば全額配当できる」と考えていたものの、会社法上の分配可能額を正しく計算すると、実際に配当できる上限額は想定よりも低かったことです。二つ目は、配当に必要な株主総会決議がまだ行われていなかったことです。そこで、送金をいったん止め、会社法上の分配可能額の範囲内で配当額を決め直し、書面決議により株主総会決議を整えました。

配当は「送りたいときに送れる」ものではありません。株式会社でいくら配当できるかは法定の分配可能額が決め、合同会社では利益の配当に関する制限と定款の定めが適用されます。また、どの決議または決定が必要かも、会社の形態によって決まります。いずれも、銀行に送金の相談をする前に済ませておく必要があります。
日本子会社から台湾親会社へロイヤルティを支払おうとしたところ、資金は用意できているのに、銀行から送金を保留され書類の提出を求められました。なぜでしょうか。

日本には、資金のクロスボーダーでの移動について複数の規制があり、銀行はさまざまな事情から、送金の実行前にこれらの規制に対応する書類の提出を求めます。外国企業にとって関係が深いのは、次の三つです。 1. 対外支払の報告:日本子会社が台湾親会社へロイヤルティ、サービス料、配当などの対外支払を行う場合、通常の経常取引については、一件当たり 3,000 万円相当額を超える支払について報告が必要です。報告書は「支払又は支払の受領に関する報告書」といい、銀行を経由して日本銀行へ提出します。通常、一件当たり 3,000 万円相当額以下の支払については報告不要です。 2. 資金の貸借と証券の取得は別の枠組みであり、金額だけでは判断できません:台湾親会社が日本子会社へ資金を貸し付ける場合や、証券を取得する場合、外為法上、資本取引に当たることも、対内直接投資・対外直接投資に当たることもあります。事前届出か事後報告かは、取引ごとに確認する必要があります。たとえば、居住者が非居住者から証券を取得する場合などには、取引金額が 1 億円相当額を超えると、「証券の取得又は譲渡に関する報告書」の提出が必要となることがあります。一方、外国親会社から日本子会社への貸付については、単純に「1 億円超」で判定するのではありません。外国親会社からの借入残高が日本子会社の負債総額の 50%相当額を超えるかなど、いくつかの要件を確認します。具体的には、① 1 年を超える貸付であること、②その親会社からの貸付残高が 1 億円相当額を超えること、③その貸付残高と、その親会社が保有する当該日本子会社発行社債の残高の合計が、日本子会社の負債総額の 50%相当額を超えること、という複合要件を確認します。これらは、対内直接投資に該当するかどうかを確認するためのものです。対内直接投資に該当する場合には、別の審査の枠組みに対応することになります。 3. 銀行は書類を事前に求めます:外為法上、支払等報告は「事後報告」とされています。しかし実務では、多くの金融機関がマネー・ローンダリング対策の観点から、高額の対外送金について送金前の確認を行っています。特に、一件 3,000 万円相当額を超える送金や、配当、ロイヤルティ、親会社へのサービス料などの送金では、銀行から「支払又は支払の受領に関する報告書」や、その基礎となる契約書、株主総会議事録又は社員決定書、請求書などの提出を求められることが少なくありません。必要書類の確認が終わるまで送金手続が保留されるケースもあります。

なぜ

法令上は事後報告とされていますが、実務上、銀行はこれを送金前のコンプライアンス審査として運用しています。この時点のずれが、外国企業のもっとも誤解しやすいところです。銀行から求められた書類がすぐに揃わなければ、送金の時期が遅れることもあります。また、報告義務を怠った場合には、外為法上の報告徴求や罰則の対象となる可能性があります。

どうする

1. 高額の対外送金を実行する前に、取引銀行へ必要書類を確認しておくことが望ましいです。送金の当日になってから尋ねるのではなく、事前に確認しておいてください。 2. ロイヤルティやサービス料については、計算方法を示す資料を残しておいてください。契約書はそのうちの一つにすぎません。銀行からは、その料率をどのように定めたのか、その金額をどの売上を基礎として計算したのかを確認されます。整理された明細が必要になることが少なくありません。 3. 資金の貸借と証券の取得については、どの枠組みに当たるのかを取引ごとに確認し、3,000 万円や 1 億円という数字だけを単独で当てはめないでください。また、設立時の対内直接投資の事前届出と混同しないでください。設立時の届出は日本進出時の投資審査に関する手続であり、運営段階の個々の送金とは別のものです。

事例

ケース:ある台湾スタートアップの日本子会社は、台湾親会社が保有するブランド・商標・ソフトウェアを利用して日本で事業を開始していました。日本での売上が伸び始めたため、親子会社間のライセンス契約に基づき、台湾親会社へロイヤルティを送金することになりました。送金額は約 4,000 万円です。会社側は、通常の海外送金と同じように銀行へ送金依頼を行えばよいと考えていました。ところが、銀行からすぐに確認が入りました。この送金の内容が分かる契約書、請求書、計算明細を提出してほしい、また 3,000 万円相当額を超えるため「支払又は支払の受領に関する報告書」も必要である、という内容です。会社側ではライセンス契約書は作成していたものの、ロイヤルティ率の根拠や、対象売上からどのように送金額を計算したかを示す明細が十分に整理されていませんでした。そのため、銀行の審査が止まり、送金実行まで数日を要することになりました。最終的には、ライセンス契約書、台湾親会社から日本子会社宛の請求書、対象売上とロイヤルティ率を示した計算明細、そして支払又は支払の受領に関する報告書を提出し、銀行の確認を経て送金は実行されました。

この会社は書類がなかったのではなく、計算の根拠と明細を事前に用意していませんでした。ロイヤルティやサービス料は、通常の商品代金とは異なり、契約内容や金額の算定根拠が確認されやすいものです。
日本子会社の初年度が赤字でも、税金を納め、申告をする必要はありますか。

はい、必要です。初年度に利益が 1 円も出ていなくても、貴社が支出しなければならないものが二つあります。一つは「均等割」です。均等割の金額は、自治体・「資本金等の額」・従業員数によって決まり、東京都特別区は最低年 7 万円です。均等割は赤字であっても発生し、利益が出ているかどうかは金額に影響しません。 日本子会社が向き合う税は、まず「利益に連動するかどうか」という切り口で二つに分けて整理できます。一つは利益に連動するもので、利益が出たときに納め、初年度が赤字であれば発生しません。もう一つは利益に連動しないもので、会社の登記があり事業を行っている限り、毎年発生します。均等割はこちらに含まれます。消費税はこの切り口の外にあり、課税事業者か否かで決まり、利益の有無とは関係がありません。 申告も同じで、赤字であっても行わなければなりません。各事業年度の終了後に決算を締めて申告します。期限は事業年度終了後 2 か月以内です。税務申告は、ほとんどの企業が税理士に委託し、電子申告にて手続きを完了させるのが一般的です。この過程で、申告に関わる費用が発生します。

なぜ

均等割の金額は、税務当局が貴社の業績を見て算定するものではありません。金額を決めるのは二つの数字です。一つは税務上の「資本金等の額」、すなわち登記簿上の資本金に、資本準備金として計上された部分を加えた額です。もう一つは、その地域で雇用する従業員数です。資本金等の額が 1,000 万円を超える場合や、従業員 50 人超になると増額されます。どちらの数字も貴社自身が選ぶものですから、初年度のこの支出は、事業を開始する前の時点ですでに確定しています。 資本金は、もう一つの線にも関わります。事業税には「外形標準課税」(資本金 1 億円超の法人が対象)という別の課税方式があり、資本金 1 億円超になると税務上不利になる場合があります。多くのスタートアップは初年度の時点で 1 億円には届きませんが、将来の増資でその規模に達するとき、この境目が税負担を直接左右します。なお、資本金 1,000 万円という数字は消費税の側にも別の判定があり、金額は同じでも判定の仕方は異なります。

どうする

1. 初年度の予算を組む際に、利益に連動しない支出を二つ書き入れてください。一つ目は均等割です。東京都特別区は最低年 7 万円で、資本金等の額が 1,000 万円を超える場合や、従業員 50 人超になると増額されます。均等割の金額は自治体によって異なりますので、東京都以外に会社を置く場合は、その自治体に自社がどの区分に当たるかを確認してください。二つ目は記帳・決算・申告に発生する費用です。金額は委託する範囲によって決まりますので、資本金を決める前に税理士に見積りを依頼してください。 2. 資本金を決める日に、二つの線を同時に確認してください。一つは均等割の区分で、資本金等の額 1,000 万円と従業員 50 人が境目です。もう一つは 1 億円で、これを超えると事業税の課税方式が切り替わります。初年度のうちにこの二つの数字を設立書類とあわせて記録しておき、将来増資を検討するときに取り出して照合してください。 3. 「事業年度終了後 2 か月」を社内のカレンダーに入れてください。決算・申告・納付をすべて終える期限であり、赤字の年度も同じです。税理士を探すのは決算日より後ではなく、決算日より前に済ませてください。

事例

ケース:台湾から進出した AI スタートアップの日本子会社(資本金 500 万円)のケースです。設立初年度は開発・マーケティング先行で赤字決算となりました。経営陣は「赤字だから初年度は税金が一切かからない」と思い込んでいましたが、決算時に都税事務所から「法人住民税の均等割 7 万円」の納付書が届き、驚きました。

赤字の初年度にまず予算へ計上すべきなのは、利益に連動しない固定的な支出です。このケースの会社は資本金を 500 万円に抑えていましたが、均等割は発生しました。
日本子会社の資本金を 1,000 万円未満にすれば消費税を納めなくてよいと聞きましたが、本当でしょうか。

本当です。貴社が日本子会社を設立する際、設立時の資本金を 1,000 万円未満とすれば、原則として第 1 期および第 2 期は免税事業者となります。免税事業者とは、消費税の申告も納付も必要のない事業者です。 台湾親会社からの出資で設立する場合、あえて資本金を 900 万円等に抑えることで、初期の消費税負担を合法的に回避するケースが多いです。 ただし、2023 年 10 月に導入された「インボイス制度」により、BtoB ビジネスを行う場合、顧客から「適格請求書(インボイス)」の発行を求められることが多くなりました。インボイスを発行するためには、あえて免税事業者の権利を放棄し、自ら「課税事業者」として登録する必要があります。

なぜ

資本金のほかに、株主の規模という関門があります。新設法人の株式を一の者が直接または間接に 50% 超保有し、かつその者の課税売上高が 5 億円を超える場合、その新設法人は第 1 期から課税事業者となり、資本金の額は結果を左右しません。台湾親会社が日本子会社を 100% 保有する場合、50% 超という条件は最初から満たされます。免税事業者となれるかどうかを実際に決めるのは、親会社自身の課税売上高です。また、2024-10-01以後に開始する課税期間については、親会社の売上金額・収入金額その他の収益の合計額が、国外分を含めて 50 億円を超える場合も、日本子会社は第 1 期から課税事業者となります。台湾親会社が相当の規模、特に上場企業である場合は、日本国内の課税売上高が 5 億円以下でも、このグローバル基準に該当して免税を受けられないことがあります。 二つ目の関門は、貴社の顧客です。免税事業者のままでいることが、常に有利とは限りません。BtoB が中心の場合、未登録は取引機会の喪失に直結し、BtoC が中心であれば、免税のメリットを享受しやすくなります。判断の軸は「免税を維持する=節税」ではなく、「登録の有無は顧客構成(BtoB か BtoC か)で決まる」という整理です。最初の法人顧客との契約交渉では、適格請求書を発行できるかどうかが取引条件そのものになります。この判断は、その交渉に入る前に終えておいてください。

どうする

1. 資本金を決める日に、台湾親会社自身の課税売上高が 5 億円を超えていないかを確認してください。超えていなければ、資本金を 1,000 万円未満とすることで、第 1 期および第 2 期は消費税の申告も納付も不要です。超えている場合、資本金の額にかかわらず、第 1 期から申告と納付が始まります。ただし、2024-10-01以後に開始する課税期間については、国外分を含む売上金額・収入金額その他の収益の合計額が 50 億円を超えていないかも確認してください。5 億円の要件を満たさなくても、50 億円を超える場合は、第 1 期から申告と納付が始まります。 2. 入金の相手が誰かを、先に整理してください。顧客が主に一般消費者であれば、免税のメリットを享受しやすく、登録を急ぐ必要はありません。顧客が主に法人であれば、取引先との関係上、初年度から課税事業者を選択せざるを得ないケースが増えており、先に確保した免税期間は実際には長く使えません。

事例

ケース:日本の企業向けに SaaS を提供する台湾スタートアップのケースです。設立時の資本金を 500 万円とし、消費税の免税事業者としてスタートしました。しかし、サービス提供開始後、日本の大手クライアントから「インボイス登録番号がないと契約手続きが進められない」と指摘されました。急遽、事業年度の途中でインボイス発行事業者の登録を申請し、課税事業者となることを選択しました。結果として消費税の納付義務は生じましたが、これによって大口契約を無事獲得できました。

免税のメリットの大きさを決めるのは、資本金の額ではなく、顧客が誰かです。このケースの会社は資本金を 500 万円に抑えましたが、登録は結局必要となり、その代わりに大口契約を獲得しました。
日本子会社の登記が完了した後、税務上まだ提出しなければならない書類はありますか。期限に遅れるとどうなりますか。

はい、あります。とくに重要なのが「青色申告の承認申請書」で、その期限には間違えやすい点があります。青色申告の最大のメリットは「欠損金(赤字)の繰越控除」で、設立初期に発生した赤字を最大 10 年間繰り越し、将来の黒字と相殺して法人税をゼロに近づけることができます。この申請書を提出しなければ、第 1 期の赤字は将来の黒字と相殺できません。 この申請書の提出期限は、二つの日のうち早いほうで決まります。一つは設立の日以後 3 か月を経過した日、もう一つは設立第 1 期の事業年度終了の日です。提出は、そのいずれか早い日の前日までに済ませてください。 もう一つ、外国企業に特有の重要な届出として「申告期限の延長の特例の申請書」があります。この申請書を提出すると、法人税の申告期限を、事業年度終了後 2 か月から 3 か月に延長できます。ただし、延長されるのは「申告」のみで「納付」の期限は延長されないため、2 か月目に見込額を納付し、確定時に差額が発生した場合はその時に精算する形となります。

なぜ

登記が完了した後の税務の届出は、限られた資源で事業を進めるスタートアップにとって、大きな意味を持ちます。 たとえば、スタートアップの支出は設立初期に集中し、収入はそれより後になることが多くあります。青色申告は、まさにこの時間差に対応する制度です。初期の投資にかかる負担を軽くする働きがあり、これがなければ、初期の赤字とその後の黒字は互いに無関係なものとなり、利益が出た最初の年度から全額に対して課税されることになります。

どうする

1. 日本で会社の登記が完了した日に、青色申告の承認申請書の期限を計算し、社内のカレンダーに入れてください。計算のしかたは二つの日のうち早いほうで、一つは設立の日以後 3 か月を経過した日、もう一つは設立第 1 期の事業年度終了の日です。提出は、その早いほうの日の前日までです。第 1 期を 3 か月より短く設定する場合は、事業年度終了の日のほうが基準になります。 2. 同じタイミングで、申告期限の延長の特例の申請書もあわせて提出してください。これにより、法人税の申告期限が事業年度終了後 2 か月から 3 か月に延びます。ただし納付の期限は延びません。2 か月目に見込額を納付し、確定時に差額が発生した場合はその時に精算してください。消費税の申告期限も延長する場合は、別途「消費税申告期限延長届出書」の提出が必要です。 3. 税理士を探すことは、登記と同時に進めてください。設立直後の届出は、いずれも期限が短いため、登記が終わってから探し始めるのでは間に合わないことが多くなります。

事例

ケース:日本子会社の設立登記を自社(または司法書士のみ)で済ませ、税理士への相談が遅れたケースです。設立からすでに 4 か月が経過した段階で税務顧問の依頼を受けました。この時点で「青色申告の承認申請書」の提出期限(3 か月)を過ぎていたため、第 1 期目は青色申告ができず、初年度に発生した多額の開発費・広告費による赤字を翌期以降に繰り越すことができなくなってしまいました。

税務には複雑さがあり、期限に関する制約も数多くあります。このケースの会社は期限を過ぎてから税理士に依頼したため、初年度の赤字を控除に使えず、残念な結果となりました。
日本のお客様から「適格請求書」の発行を求められています。これは何ですか。登録すべきでしょうか。登録すると、どのような義務が生じますか。

日本で事業を行い、お客様から代金を受け取ると、その中には消費税が含まれています。この消費税は、原則として国に納めます。ただし、規模の小さな会社は納める必要がなく、受け取った消費税分をそのまま自社に留保できます。この立場を「免税事業者」といいます。 日本の法人のお客様も、自社の消費税を納めます。その際、お客様は、あなたへの支払いの際に生じた消費税を差し引くことができます。これを「仕入税額控除」といいます。ただし差し引くには、あなたが発行した請求書に「登録番号」が記載されている必要があります。この請求書が「適格請求書」です。 登録番号は、税務署に申請して登録することで取得できます。登録後の立場を「適格請求書発行事業者」といいます。登録しなければ、この請求書は発行できません。 登録の要否は顧客構成によって判断します。税務プランニングだけの問題ではなく、事業運営上の判断でもあります。 1. お客様が主に日本の法人の場合:原則として登録すべきです。未登録の場合、顧客側で消費税の仕入税額控除ができず、顧客の税負担が増えます。そのため、取引を敬遠されたり値下げを要求されたりするリスクがあります。 2. お客様が主に一般消費者の場合:一般消費者は仕入税額控除を行わないため、登録番号を求められることはありません。免税事業者のままでいるメリットが大きく、受け取った消費税は自社に留保できます。 3. 登録すると、会社は同時に「課税事業者」となり、消費税の申告・納付義務が生じ、免税事業者ではなくなります。登録番号だけを取得して納税義務は負わない、ということはできません。 4. 負担を軽減する措置として「2割特例」があります。登録によって課税事業者となった中小事業者は、受け取った消費税の20%を納税額とすることができます。ただし2割特例は、令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間までの時限措置である点に注意が必要です。 5. 登録後は、自社が支払った消費税を控除する側にもなります。ここには2029年9月30日で終了する措置が二つあります。免税事業者からの仕入れは全額を控除できず、現在は80%、2026年10月からは50%となります。規模の大きくない事業者は、1万円未満の課税仕入れについて、帳簿の保存のみで控除できます。

なぜ

日本の法人のお客様は、登録番号を契約条件の一つとして扱います。価格交渉の材料ではなく、交渉を始められるかどうかの基礎的な前提です。契約交渉の途中で先方の経理担当者から登録番号を尋ねられた場合、残された道は二つです。急いで登録するか、その契約を諦めるかです。 「免税を維持する=節税」という単純な図式は、常に当てはまるわけではありません。法人のお客様が中心の会社が登録しないと、取引機会そのものを失うことがあります。

どうする

1. まず顧客構成を書き出してください。日本の法人が何割、一般消費者が何割かを確認します。 2. 法人のお客様が中心であれば、最初のお客様との契約交渉を始める前に登録を済ませてください。 3. 登録した後は、自社の事業年度で2割特例をまだ使えるかどうかを税理士に確認してください。

事例

事例:台湾のゲーム開発会社が日本でパブリッシングを行ったケースです。ユーザーの100%が一般消費者であったため、インボイス登録は行いませんでした。資本金1,000万円未満で設立し、第2期まで免税事業者を選択しました。ユーザーから受け取った消費税分は、そのまま自社に留保できました。

この事例の計算が成り立つのは、「お客様がすべて一般消費者である」場合に限ります。法人のお客様との取引を始めたら、改めて計算し直してください。
日本に法人を設立しておらず、営業は現地の方に業務委託して行っています。その方が顧客と直接価格交渉を行い、契約を締結してもよいのでしょうか。

交渉はできますが、貴社のために契約を締結することはできません。 日本に子会社や支店を持たず、台湾法人のまま日本市場を開拓する場合、日本にいるその方は業務委託の営業担当者であって、貴社の従業員ではありません。この形態そのものが課税につながるわけではありません。問題となるのは、その方にどのような権限を与えるかです。その方に「台湾法人のために契約を締結する権限」を与え、反復して契約を行わせると、その個人が「代理人PE」と認定されるリスクがあります。代理人PEとは、その方を日本における貴社の拠点とみなすということです。 認定された場合、台湾法人の日本での売上に対して日本の法人税が課税されます。課税されるのはその日本人担当者ではなく、貴社(台湾法人)です。 原則として過去5年分(偽りその他不正行為があれば7年分)に遡って、PEに帰属する日本での所得に法人税が課され、無申告加算税・延滞税も加算されます。 スタートアップが最も陥りやすいのは、この「代理人PE」のリスクです。日本に法人も場所も持たず、一見すると日本には何もないように見えても、反復して契約を締結する方が一人いれば、認定のリスクは生じます。 線引きはここです。日本の営業担当者には「市場調査や顧客開拓、情報提供」のみを行わせてください。最終的な契約締結権限は会社を代表する権限を有する者、または契約締結の決裁権限を持つ本社の責任者に留保し、締結するかどうか、およびその条件についての最終判断も、当該責任者が行うようにしてください。

なぜ

業務委託契約書を改定するだけでは、その方が取引を成立させる立場にないことを示すには足りません。契約書に契約締結権限がないと記載していても、実際にはその方が顧客と価格交渉を行い、そのまま成約している場合、税務調査で見られるのは後者です。業務委託契約書を改め、実際の商談プロセスも併せて改め、両者が一致している必要があります。 これは規模の問題ではありません。一人の担当者と一件の業務委託契約があれば、貴社(台湾法人)が日本の法人税の対象となり得ます。またこのプロセスは厳格に守り続ける必要があります。最初の契約のときだけ守り、その後は緩めるということでは意味がありません。

どうする

1. 日本の営業担当者の業務範囲を明確にしてください。市場調査、顧客開拓、情報提供までです。その先の契約締結は、その方の業務ではありません。 2. 業務委託契約書に「契約締結権限を有しない」ことを明記してください。 3. 締結するかどうか、およびその条件についての最終判断は会社を代表する権限を有する者、または契約締結の決裁権限を持つ本社の責任者が行い、最終的なサイン(電子署名を含む)も当該責任者が行ってください。当該責任者が署名した顧客との契約書、およびプロセスが実際に運用されていることを示すその他の記録は、保管してください。

事例

事例:日本に法人を設立せず、業務委託の日本人カントリーマネージャー1名で事業展開していた台湾企業のケースです。そのマネージャーが日本の顧客と直接価格交渉を行い、実質的に契約を締結していました。税務調査のリスクを指摘された後、業務委託契約書を改定して「契約締結権限を有しない」ことを明記するとともに、実際の商談プロセスでも最終的なサイン(電子署名を含む)は台湾本社のCEOが行うフローに改善しました。これにより代理人PE認定のリスクを低減させました。

ここで重要なのは、その方が従業員か業務委託かではなく、また肩書きが何かでもありません。最終的な判断をその方が行っているかどうかです。
日本子会社から台湾親会社へ配当した際、事前の届出書の提出を失念し、20.42% の源泉徴収を受けてしまいました。差し引かれすぎた分は取り戻せるのでしょうか。次にロイヤルティを支払う際も同じことが起きるのでしょうか。

取り戻すことができます。しかも期限は長く、源泉徴収の日から 5 年以内であれば手続きが可能です。 配当を日本から送金する際には、原則として 20.42% の源泉税が差し引かれます。支払の前に、日本子会社が所轄の税務署に届出書を提出すると、日台租税取決めにより 10% に軽減されます。この取決めは、日本と台湾それぞれの民間機関が締結したものであり、政府間の条約ではありません。 届出書を提出していない場合、過大に源泉徴収された 10.42% を取り戻すには、二つの書類が必要です。一つは台湾の税務当局が発行する居住者証明書で、台湾親会社が台湾で納税している会社であることを示すものです。もう一つは「外国居住者等所得相互免除法に関する源泉徴収税額の還付請求書」で、国税庁のウェブサイトから入手できます。二つを揃えて所轄の税務署に提出すると、還付を受けられます。 事前に届出書が必要なのは、配当だけではありません。日本子会社が稼いだ資金を台湾親会社へ支払う方法としては、ほかに「経営指導料」と「ロイヤルティ」の二つがあります。経営指導料は、台湾親会社が日本子会社のために管理・総務・営業指導といった業務を行い、日本子会社がその対価として支払う費用です。ロイヤルティは、日本子会社が台湾親会社の特許・商標・技術・著作物を使用し、その対価として支払うライセンス料です。ロイヤルティも日台租税取決め上の源泉税率は 10% であり、同じく事前に届出書を提出しなければ適用を受けられません。 補足します。この三つは資金還流の選択肢であり、主な違いは税にあります。1. 配当は、法人税を納めた後に残った資金を分配するもので、分配の際にさらに源泉税が差し引かれます。2. 経営指導料とロイヤルティは、基本的には日本子会社側で損金算入できるため、課税所得が小さくなり、法人税の負担が軽くなります。ただし金額は自社で自由に決められるものではなく、移転価格税制の観点から検討する必要があります。これは別の制度で、親子会社間の取引価格を、資本関係のない第三者間で取り決められる価格と同じ水準にすることを求めるものです。この分野の細部は、ここに記載した以上に多岐にわたります。

なぜ

届出書は、一度提出すればそれで足りるというものではありません。配当の際に提出した届出書が、次にロイヤルティを支払う際に必要となる届出書を兼ねることはありません。 もう一点ご留意ください。事後の手続きによって過大に源泉徴収された税額を取り戻すことはできますが、実務上は、日本の税務署から還付を受けるまでに数か月を要します。この間、資金繰りに影響が生じます。

どうする

1. 20.42% の源泉税がすでに差し引かれている場合は、まず台湾の税務当局に居住者証明書を申請してください。還付請求書とあわせて日本の税務署へ提出します。源泉徴収の日から 5 年以内であれば間に合います。 2. 「支払の前に必要な届出書を提出する」ことを社内のフローに組み込み、配当以外の支払類型も対象としてください。ロイヤルティは、支払の都度、個別に届出書を提出する必要があります。 3. 経営指導料またはロイヤルティを選ぶ前に、金額の算定根拠をご用意ください。移転価格税制の観点から検証されるためです。

事例

事例:日本子会社から台湾親会社へ初めて配当を行った際、事前の届出書の提出を失念し、20.42% が源泉徴収されたまま送金してしまいました。その後、台湾親会社から居住者証明書を取り寄せ、還付請求を行い、数ヶ月後に過大に源泉徴収された分の還付を受けました。この一件以降、ロイヤルティ支払いの際も必ず事前に届出書を提出するフローを社内に確立させました。

必要書類の準備は、台湾側と日本側の双方で動く必要があります。届出書や還付請求書は日本子会社が提出しますが、居住者証明書は台湾親会社側で申請し、日本子会社へお渡しいただく必要があります。台湾側が動かなければ、日本側は手続きを進められません。